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「……花火?」
こちらにやってきて、ちぎれんばかりにしっぽを振るジルヴァを撫でる奴に問い返す。
「そ。こっから少し遠いが、夏祭りやってんだよ。ジルヴァは耳がいいから、聞こえるんだろうな」
言われて、そういえば最近、浴衣姿の客を見かけるようになった。
自分に果てしなく関係ないから、頭からすっかり抜けていた。
「来週さ、この近辺でも夏祭りするから、おれ達も行こうぜ。オーナーのじーさんにも、休みにしてくれるよう言っておいたから」
「いつだが知らないが、俺はいそが──今、なんて言った」
「じーさんに、可愛い弟達と夏祭りに行きたがっていて、けど、休めなさそうだからどうしようかと悩んでいたんだぜと言ったら、即座にオーケーしてくれたって話」
あぐらをかいた膝上にジルヴァを乗せ、小さな手を取って、オーケーポーズをさせている奴の言葉にまた耳を疑った。
また勝手なことを。
またというのは、奴の作った料理にジルヴァはあんなにも好きだったコンビニのおにぎりに見向きをしなかった嫉妬で、一人と一匹、さらにはオーナーに八つ当たりをし、その後、いつの間にやらオーナーに弁明し、仲良しに発展したということだ。
何を言ったか知らないが、オーナーの言葉から察するに、「兄弟仲がいいんですね」だ。
そんなわけがなかろうに。
色々と言いたいことがあったが、今は「汚い手でジルヴァに触るな」と言うのが精一杯だった。
そして、改めて陽キャは嫌いだと思ったのであった。
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