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「兄貴っ! 何があったんだ!」
「……匡……っ」
騒ぎに駆けつけた奴が隣に来て、手短に説明すると、「なるほどな!」と手に持っていたたこ焼きをジルヴァに差し出した。
「何を」
「いいから! ──ほら、ジルヴァ、 熱々のうまうまなたこ焼きだぞ〜!」
鼻にくっつけんばかりにたこ焼きを寄せつける。
そんな無意味なのではと、呆れていたのも束の間、いとも簡単に口を離したジルヴァが、鼻をひくつかせ、たこ焼きを見ていた。
「ほらほら、こっちの方が美味いぞ〜」
「わうっ」
たこ焼きにかぶりつきそうになると、離し、ジルヴァの方が離れると近づかせたりしていた。
こんなにも簡単だったとは。
と呆然していると、たこ焼きを押しつけられる。
「ほらっ! このたこ焼きを持って、兄貴はどっか遠い所に行けっ!」
「遠い所、ってどこにっ」
「とりあえず、真っ直ぐに行っておけ! ここはおれがどうにかしておくから!」
「ほら、行った! 行った!」と背中を強く押してくるものだから、たたらを踏みそうになりながらも、野次馬化としていた周りの人達の合間を縫って、とにかくがむしゃらに走った。
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