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「何で知ってんの?!」
驚きのあまり誤魔化せなかった。正直に訊いてしまった。
「え? だって俺が平田だから」
莉子には一瞬菅野が何を言っているのか理解できない。
(菅野が、平田……?)
莉子だってアプリ上では偽名を使っている。パパに会ってもその偽名で付き合うし、大学名や学部、住んでる場所まで全て嘘。虚構の自分を完璧に作り上げており、アプリ上でみても、もう一人のパパ活用の自分、花音が、莉子だとは絶対にバレない自信がある。
「莉子は、花音なんだろ?」
(どうしてそれを……。なんで……。しかもバレただけじゃなくなんで平田とかいう偽名を使って私と約束までするの?!)
アプリ上での平田は、30代のエリート会社員。身長180センチ。結婚はしたくないので遊ぶだけの相手を探しているという男だった。身長以外は菅野と全部異なる。
「なんなの?! 営業妨害しないでよ。菅野じゃ相手にならないから、サヨナラ!」
苛々する。こんな金の稼ぎ方をする莉子を馬鹿にしているのだろうか。
とにかく会社員の平田が菅野だったのなら、これ以上ここで待っていても意味はない。莉子はこの場から立ち去ろうとする。
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