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「わかった。じゃあメシを奢らせてくれたらその時に話してやるよ。どうだ? これで一緒に来てくれるか?」
ほぼ脅迫だ。菅野との食事に同意しなければ真相もわからないし、そういえば菅野に弱みを握られているような状態なのだという事に気がついた。
「じゃあ今回だけ付き合う。だから大学でこのバイトのこと、絶対に喋ったりしないでよね!」
菅野が脅迫するならこちらも条件をつけてやる。そんな莉子に対して菅野は「言うわけないだろ」ときっぱりと言い切った。
「……そろそろ離してよ。痛い」
強く掴まれた腕が痛くて耐えられなくなってきた。
「逃げるなよ」
睨みをきかせながら菅野が手を離す。莉子の腕にようやく自由が戻り、少しほっとした。
「さっさと行こ。洗いざらい全部話してもらうからね!」
腹を括ったら急にやる気が出てきた。菅野から全部聞き出してやる。
「ああ。もちろん。それにしても花音ちゃん。そのワンピースすごく可愛い。似合ってるぜ」
悪びれもせずに莉子を偽名の花音呼びをして、ニヤリと笑う菅野。人をおちょくるにも程がある。
「その呼び方やめてよ!」
菅野に冷たい視線を向けたのに、菅野は莉子を眺めて満足気だ。
莉子が身につけているのはパパ活バイト用のワンピースだ。パパ達には清楚系が好まれるので、スカート丈は膝丈。但し腕は露出狙いのノースリーブ。少し光沢感のあるネイビーの生地にポイントにレースも付いている。
普段大学には絶対に着ていかないチョイスの服装まで菅野に見られて本当に恥ずかしい。そしてそのことを揶揄ってくる菅野は最悪だ。
莉子はため息をついた。そして菅野の横に並んで重い足どりでレストランへと歩き出した。
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