3人が本棚に入れています
本棚に追加
数十分ほど経っても、まだ雨の気配は遠ざかりそうになかった。
「雨、止みそうにないね」
「……うん」
雨音は嫌いじゃない。聞いていると、気持ちが落ち着くからだ。歩き続けて疲れたこともあって、わたしはそのうち、まどろんできた。ユナの髪がふわっと頬をかすめたのを感じたが、そのまま眠りに落ちてしまっていた。
次に気がついたとき、わたしは椅子に座っていた。体には薄い毛布がかけてある。見上げると赤紫の空が見えている。いつの間にか雨は上がったようだ。木のそばにテントまで張ってあるところを見ると、それなりの時間、眠っていたらしい。
ユナの姿を探すが、近くに姿はなく、リュックはテントに置いてある。わたしは彼女を探して付近を歩いた。
砂漠地帯から一変して、植物が生い茂る山岳地帯に変わっていた。ユナは山の中に入ってしまったのだろうか。茂みを覗き込むと、丁度ユナが降りてくるのが見えた。
「ユナちゃん、ごめんね、寝ちゃってた」
「寝ててよかったのに」
そう言うユナは、袋を提げていた。
「何か採ってきたの?」
「山の幸」
袋の中を見せてもらうと、ゴボウや春菊など、山菜がぎっしり入っていた。
採った山菜を鍋で茹でてアク抜きをする。ゴボウだと思っていたものは自然薯で、表面をよく洗ってからすりおろす。鍋に水を入れ、粉末だしと醤油、山菜を入れたら、しばらく火にかける。沸騰し始めたところへ、すりおろした自然薯をスプーンで落としていく。自然薯と山菜のお吸い物の出来上がりだ。
最初のコメントを投稿しよう!