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「あたたまるね」
簡易テーブルを挟んで、ユナとお吸い物をいただく。温かいお汁は、身体の芯からポカポカと温めてくれる。自然薯のお団子のふわふわした食感がたまらない。わたしはしばらく食べるのに夢中になってしまった。
ひとしきり堪能して、一息ついて、わたしはお椀から立ち昇る湯気の向こうのユナを、チラと見た。
「ユナちゃん、何でも出来るよね。尊敬しちゃうよ」
「……そんなことないよ」
「いやいや、ユナちゃんにそんな風に言われたら、わたしなど、何の役にも立たないただの小娘でございますよ」
ユナちゃんはリアクションが薄いので、ついついこちらの口数が増えてしまう。
「……わたし、うるさい?」
ユナは少しだけわたしの顔を見たが、何も言わずにお吸い物をすすった。これはどっちなんだろう。判断出来ないので、わたしはしばらく黙ってご飯を頂いた。
採れたての山菜はシャキシャキしていて、お互いの咀嚼音がよく聞こえる。それだけに、沈黙が気まずい。わたしがウズウズしていると、ユナが箸を置いた。
「気を遣う必要、ないから」
「え?」
わたしが見ると、ユナは三秒もしないうちに視線を反らしたが、つぶやくように言葉を継いだ。
「……長い旅になるんだし、やりづらいでしょ」
ユナはそれだけ言うと、自分の食器を雨水を貯めたバケツで洗い始めた。ユナこそ、わたしに気を遣っている。なんなら、わたしをもてなそうとさえしている。きっとそれは、彼女の二回目の願いに関係している。もう少しお互いの事を知れば、話してくれるだろうか。
「ユナちゃんもね。遠慮しないで、何でも言ってよね」
わたしは残ったご飯をかきこんで、食器洗いに加わった。
この旅がどういうもので、どこに向かうのかは、まだわからない。それでも、彼女がいれば何とかなるような、そんな気がした。
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