ビギナーズラック

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 川辺りでの日向ぼっこを続けて小一時間ぐらい経った。一向に魚は釣れそうにない。 「釣れないね」 「そう簡単にはいかないよ」 「ねえ、わたしがやってみてもいい?」  お願いしたら、ユナは餌を付け替えて、わたしに竿を差し出してくれた。人生初めての釣り。水面とにらめっこしてみると、思ったより落ち着く。心の中を無にして、魚の動きを捉えてみよう。 「……引いてるよ」 「えっ」  ユナに言われて、糸が何かに引っ張られているのに気づく。魚の動きを捉える以前の問題だ。 「どうしたらいいのっ」  パニックになっていると、ユナが一緒に竿に手を掛けて、思い切り上に引っ張った。同時に糸の先に引っかかった魚が、水面から勢いよく飛び出してきた。尻もちをついたが、それなりに大きい魚がかかっていた。 「イワナだよ。やるじゃん、レミ」 「えへへ、わたしは釣り竿を持ってただけだけど」  ビギナーズラックというやつだろうか。褒められて悪い気はしない。ユナは折り畳みバケツに採れたての魚を放り込んだ。
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