銀世界にて

1/2
前へ
/28ページ
次へ

銀世界にて

 顔を出したばかりだというのに、太陽は物凄いスピードで沈み始めた。さらに、さっきまでいいお天気だったのに、小雨がぱらついてきて、挙げ句の果てには雪が降り始めた。 「ユナちゃん、今、冬なの?」  前を行くユナの後ろ姿が吹雪で霞み始めていた。 「ここの季節はその日次第」  気温の変化が激しく、昼夜の時間も不定期。気をつけないと、そのうち本当に体調を崩しそうだ。  しばらく降り続いた雪は、あっという間に辺りを白く染め、わたしたちは銀世界の真っ只中にいた。  ユナは川辺りの老木の側に荷物を下ろした。リュックの中からスコップを取り出して、柄を伸ばす。さらに、スコップの先で、地面に大きな円を描いた。 「何するの?」 「かまくらを作る」  そう言うと、ユナは折りたたみバケツを渡してきた。 「これにどんどん水を汲んで来てもらえる?」 「合点、承知です」  初めてユナに頼られて、ちょっと嬉しくなる。勢い勇んでバケツを川の水に突っ込んだところで、わたしは後悔した。今にも凍りつきそうな程の冷たさだったからだ。  ユナは円に沿って雪を集め、少しづつ高く積んでいく。そこにわたしが汲んできた水をかけて、スコップで固めていく。この工程を繰り返していくと、気づいたときには雪のドームが出来上がっていた。 「お疲れ様」  出来上がったかまくらを見上げて、ユナが言った。 「ユナちゃんこそ」  小さいかまくらだが、二人で作るには中々の重労働だった。 「入ってみてもいい?」 「どうぞ」  人生初めてのかまくらにテンションが上がる。死にかけている今の経験が人生に入るのかは微妙だが。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加