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銀世界にて
顔を出したばかりだというのに、太陽は物凄いスピードで沈み始めた。さらに、さっきまでいいお天気だったのに、小雨がぱらついてきて、挙げ句の果てには雪が降り始めた。
「ユナちゃん、今、冬なの?」
前を行くユナの後ろ姿が吹雪で霞み始めていた。
「ここの季節はその日次第」
気温の変化が激しく、昼夜の時間も不定期。気をつけないと、そのうち本当に体調を崩しそうだ。
しばらく降り続いた雪は、あっという間に辺りを白く染め、わたしたちは銀世界の真っ只中にいた。
ユナは川辺りの老木の側に荷物を下ろした。リュックの中からスコップを取り出して、柄を伸ばす。さらに、スコップの先で、地面に大きな円を描いた。
「何するの?」
「かまくらを作る」
そう言うと、ユナは折りたたみバケツを渡してきた。
「これにどんどん水を汲んで来てもらえる?」
「合点、承知です」
初めてユナに頼られて、ちょっと嬉しくなる。勢い勇んでバケツを川の水に突っ込んだところで、わたしは後悔した。今にも凍りつきそうな程の冷たさだったからだ。
ユナは円に沿って雪を集め、少しづつ高く積んでいく。そこにわたしが汲んできた水をかけて、スコップで固めていく。この工程を繰り返していくと、気づいたときには雪のドームが出来上がっていた。
「お疲れ様」
出来上がったかまくらを見上げて、ユナが言った。
「ユナちゃんこそ」
小さいかまくらだが、二人で作るには中々の重労働だった。
「入ってみてもいい?」
「どうぞ」
人生初めてのかまくらにテンションが上がる。死にかけている今の経験が人生に入るのかは微妙だが。
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