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乗馬体験
大きな身体を支えるには心許ない細い足。長い首には立派なたてがみが生えていて、つぶらな瞳に、可愛らしい耳がピンと立っている。
その生き物の名は、馬。広大な草原地帯に、何頭もの馬が草を食んでいた。
「雄大な自然って感じだねえ」
最近まで雪原地帯を歩いていたとは思えない光景だ。わたしが深呼吸していると、草原の一角の小屋から、ユナが椅子のようなものを持ってきた。
「それ、なあに?」
「鞍だよ。今から馬で移動するから」
「え?」
ユナは手慣れた様子で、持ってきた馬具一式を近くにいた馬に着け始めた。
「どうしたの、早く乗りなよ」
数分後、ユナは当然のように馬に乗ると、わたしに言った。
「あのう、わたしはお馬さんに乗ったこと、ありませんけど」
「大丈夫だよ。スピードさえ出さなければ。跨ったら、手綱を握って、重心を真っ直ぐにするように心がけて」
そもそも、どうしてこんなところに馬具が置いてあるんだろう。小屋みたいな人工物を見たのも温泉以来だ。
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