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一緒に旅してくれる人
足を取られて歩きにくかった砂地は、いつの間にか土に変わり始めていた。植物や木がポツポツと見つけられるようになってくる。空はずっと薄紫色。どんなに歩いても、一向に昼になる気配はない。そのあたりは死後の世界の雰囲気を醸し出している。
「ねえ、ユナちゃん、出口ってどっちかな」
「それがわかったら、苦労しないよ」
淡々と答えて、ユナは前を早足で歩いていく。
「急いでも仕方なくない?」
「この先に、温泉があるんだけど」
「えっ、温泉?」
砂漠地帯を抜けるまでに何度か休憩を挟みつつ、一日歩き続けていた。気温は低いとはいえ、さすがにお風呂に入りたいところだった。
「行きたいです! 早く行こう!」
わたしの全身に、俄然やる気がみなぎってきた。
岩場に囲まれた一角に、石を積んで作られた温泉があった。作りは簡素だが、硫黄の独特の匂いと湯気。雰囲気は十分で、本格的な温泉にも引けを取らない。わたしたちは先にテントを張って、キャンプの準備をした。
湯は熱すぎないぐらいの丁度よい温かさ。泉質はとろみがあり、肌が滑らかになる気がする。わたしたちは肩まで浸かって旅の疲れを癒やしていた。
「生き返るねぇ。これがホントの地獄温泉だね」
わたしが言うと、ユナは素知らぬ顔でそっぽを向いた。
「恥ずかしいでしょ、なんか言ってよっ」
ユナはクールな性格なのか、表情をあまり変えない。長い髪を後ろでまとめているからか、凄く大人びて見えてドキリとする。よく考えると、まだ彼女の年齢も知らなかった。何でも出来るし、頼れるし、もしかしてかなり年上の方なのでは。わたしは恐る恐る聞いてみた。
「あのう、ユナさんの歳、聞いてもいいでしょうか?」
「十七だけど。なんで急に敬語なの」
同い年だった。失礼を働いていなくてよかった。
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