残した言葉を。

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残した言葉を。

んっ? あぁ… 銀が居る… 私は銀にと、手を僅かに伸ばそうとする… でも、出来なかった。 けれど、それよりも、気になった… やっぱり… 銀は、悲しそうな顔だなぁ… 何とか声だけ、出す。 「ぎ、ん?」 それに、すぐ気付いた銀が言う。 「光希(みつき)、おはよう。」 そして優しく抱き起こすように、銀は支えてくれた。 「う、ん。 ぎん。 ありが、とう。」 あぁ、なんだろう。 あまり… 身体が、動かないや… 「あ、れ?」 目が、霞むなぁ… 起きても、銀が… 「光希(みつき)…」 銀が、少し、震えてる…? 「ぎ、ん?」 もう見えないけれど、声だけは聞こえる。 「あぁ、光希(みつき)。 すまないな。 でも、ありがとう…」 私は少し、その言葉は、嬉しいなぁ。 銀が、喜ぶなら、嬉しい… ************************** 「ぎ、ん?」 銀楊(ぎんよう)はすぐに反応した。 半年ぶりに光希(みつき)が!! 側に居た銀楊(ぎんよう)はすぐに言った。 「光希(みつき)、おはよう。」 銀楊(ぎんよう)は、またすぐにだった。 光希(みつき)の… 『様子の変化』に気付いた。 そして、ゆっくりと支えた。 もう… 銀楊(ぎんよう)は必死に自分を落ち着かせる。 もう… 『動けない』のか… やはり、もう… そう思うと、銀楊(ぎんよう)は苦しくなる。 でも、青嵐(せいらん)からも言われたな… 『感謝だ』と。 だから… せめて、これは伝えないと。 そう思いながら、どうにか銀楊(ぎんよう)は言う。 「あぁ… 光希(みつき)。 すまないな。 でも、ありがとう…」 それでも心の中で思わずには、いられなかった。 光希(みつき)… 私を… 『1人』にしないでくれ。 『私を1人』にしないでくれ。 そう願わずには、いられない。 「ぎ、ん…」 銀楊(ぎんよう)はもう… 声すら出せなく、苦しくなっていた。 それでも、どうにか光希(みつき)を支える。 そんな光希(みつき)が僅かにだった。 「あ、のね。 もし、ないた、ら… ひきだし、の、うらを…」 銀楊(ぎんよう)は瞬時に頭に入った。 「あと、ぎん… あいし、てるし… ぎん、なら、わ、たしは…」 『その言葉』に、すぐに光希(みつき)を見て答える。 銀楊(ぎんよう)も言った。 「あぁ、私も。 光希(みつき)を愛してる!!」 そして少しだが、光希(みつき)が笑ったのを見た。 「ん、なら、うれ、しいよ…」 その時だった。 光希(みつき)の息が止まった… 銀楊(ぎんよう)はすぐに、それにも気付いた。 でも銀楊(ぎんよう)は首を振った。 それでも抱き締めながらも、動けなかった。 そして光希(みつき)をしばらく… 銀楊(ぎんよう)は抱き締めたまま、声を殺す。 涙だけを… どうにかしても、声を殺すが、泣いた… それでもだった。 銀楊(ぎんよう)はもう、光希(みつき)以外。 考えられなかった… もう、身体を治しても、意味は、ない… 受け入れたくない… こんな事を… 私は… 受け入れたくない!! それでもどうしても震えて、涙だけが止められない… そして光希(みつき)をまた眺める。 「光希(みつき)…」 その顔は穏やかで… また、目を開けるんじゃないかと思える程に。 銀楊(ぎんよう)はまた首を振る。 こんなのは… それでも抱き締めながらも、光希(みつき)の頬に触れる。 そして軽いキスをする。 けれど… もう、本当に… そう思った瞬間、初めて… 『更に痛み』にも似たものが突き刺さる。 どうにか耐える… 声だけ必死に殺して、涙だけ流す。 どうにか、声だけをと。 出さずにと、必死だった。 少し、そうしていた時に、ふと。 さっきの『光希(みつき)の言葉』を思い出す。 『もし、泣いたら、引き出しの裏を』と。 光希(みつき)は… そう、言って、いた? 『私』が、もし、泣いたら? 銀楊(ぎんよう)はソッと、優しく大事なものに触れるように。 光希(みつき)をベッドに寝かせた。 毛布も整えてから、ソッとまた光希(みつき)に触れる。 光希(みつき)… あの、さっきの言葉は… そして銀楊(ぎんよう)は、部屋の中を見渡す。 『引き出しの裏を』 そう、光希(みつき)は言っていた? 銀楊(ぎんよう)は部屋の中を視線だけだが。 『確認する』ように見る。 テーブルは1つしかない。 更に引き出しも、『1つ』しかない。 銀楊(ぎんよう)はすぐに動いた。 側に行き、引き出しの裏を見た。 そこには折り畳まれた紙が貼られていた。 銀楊(ぎんよう)はそれを手に取る。 そして、広げて中を見る。 これは… 『光希(みつき)の字』だな。 さっきの言葉は、これの事か? それは光希(みつき)の字で書かれた… 『手紙』だった。 銀楊(ぎんよう)は読んでいくが… その『内容が全て』判った。 もう、その場で崩れた。 そしてまた思う。 やはり、『あの時』に… 気付いたのかと。 そして、もう声すら殺せなかった。 「み、光希(みつき)… ぁあ、っ。 ぐっ。 うぁあぁぁ…!」 初めてだった。 声を出して、もう止められなく、銀楊(ぎんよう)は泣いた。 頭の中で、光希(みつき)の笑顔ばかりが浮かぶ。 それでも苦しくて、もう泣く事しか出来なかった。 しばらく、そのまま動く事すらもだった。 ************************** 銀や子供達へ。 手紙とかは、そんなに書いた事がないから。 上手く伝えられると良いのだけど。 きっと、この手紙は、銀なら気付くよね。 読んでくれると思うんだ。 銀は、恐いと言ったよね。 私も少しだけ、恐いかなと、思うけど。 最後は、銀の顔を見れてると信じてる。 私は、妖狐じゃないから。 あまり長くない気がするんだ。 だから、もしも、これを読んでいたら。 そんなに、泣いちゃ駄目だよ? 辛いかもしれないけど。 でも、ずっとは泣かないで欲しい。 実はね。 私は銀が、少し心配なんだよ。 皆が、銀は強いと言うけれど。 本当は、我慢しているでしょう? だって、時々、痛い顔をするもん。 痛いのも、ずっと、我慢してるでしょう? 我慢ばかりは良くないからね? 多分、『長の話』があったから。 青嵐(せいらん)が、次は頑張るのかな? でも、もしも、青嵐(せいらん)だったら。 1つ、お願いがあるの。 あのね。 銀を助けてあげて欲しいの。 きっとね。 皆が思ってるより。 多分、銀は、力じゃないの。 心がね、痛いと思うの。 だから、そこを助けてあげて欲しい。 青嵐(せいらん)だけじゃないかな? 私と銀の子供達で、皆でね。 銀を、助けてあげて欲しいの。 『1人じゃない』って事を。 皆でなら、これからも大丈夫!! 私と銀との、大切な子供達なら。 皆で支え合って欲しいな。 ねぇ、銀? 子供達も判ってくれるんじゃないかな? 銀、恐いのは、そうなのでしょう? 私と一緒に居たいって言うのは。 きっと、また『1人になる』のが。 でもね。 1人じゃないでしょう? 子供達も、たくさん居るよね? 青嵐(せいらん)だけじゃなく。 これから先も、皆が同じだよね? 私と銀の子だもん。 それと、銀もだよ? 前に言ったよね? 私と銀の子だから『大丈夫』だって。 私の子供達は、皆が。 私と銀と、繋がってるんだから!! 仕事は判らないけど。 きっと、皆で、支え合っていってね? 私も銀を、愛してるから。 私は、やっぱり、銀と居られて。 嬉しいし、幸せだったから。 だから、これからも。 銀も、皆も、元気でね!! 光希(みつき)より ************************** 銀楊(ぎんよう)は、しばらく、そのままだったが… ようやく立ち上がり、光希(みつき)の側に行く。 そして、光希(みつき)を眺めながらだった。 せめて、これは… そう思いながら、先に『青嵐(せいらん)だけ』にと。 連絡をした。 光希(みつき)を見て、そして手紙を手に、思う。 これは、青嵐(せいらん)だけでなく… 他の『皆』にも、伝えなければ… 銀楊(ぎんよう)は『固定術式』を応用して。 光希(みつき)にとかける。 それから銀楊(ぎんよう)は『全ての結界』を解いた。 そのまま、しばらく… また光希(みつき)を眺めて、側に居た。 光希(みつき)? 泣いては、駄目か? 厳しいなぁ… やはり、気付いてたのか? 光希(みつき)… それがどれくらい経つか判らなかった。 それでもずっと。 銀楊(ぎんよう)は… 『光希(みつき)の側』から動けなかった。 時折、光希(みつき)を眺める。 そしてまた、目を閉じるだけ… 青嵐(せいらん)が部屋に来た様子だったが… それでも銀楊(ぎんよう)は何も言えなかった。 ************************** 青嵐(せいらん)は、父上からの連絡があった時だった。 すぐ『意味』に気付いた。 作業をすぐに他へ渡し、動いた。 場所は既に知ってる!! 母上っ!! せめて… とにかく、その場へと急いだ。 最後の姿を見る為にと、全力で向かう。 けれど、側にと見えた瞬間。 すぐに気付く。 もう結界がない!! そのまま急ぎながら、家の中に入った。 ベットの側で、父上は座ったままだった。 すぐに気付くが… それでも… 「は、母上?」 そこには既に… 術式で固定されている母上の姿でもあった。 やはり… もう… …っ。 思考よりも先に、勝手に涙が溢れた。 そのまま側に近付いても、父上は… 何も言わない。 また母上を見る。 それは、とても… 穏やかな顔だった。 本当に、眠っているだけに、見える程に… それでも、美しい姿のままだった。 っく。 青嵐(せいらん)も、声だけはどうにか。 殺そうとするだけだった。 それでも… 涙だけは勝手に、もう溢れてしまう。 その時、父上の腕が動いた。 何か紙を渡し、そして父上は立ってから。 何も言わずだった。 そのまま、外へと出て行った… 青嵐(せいらん)は渡された紙を見た。 これは… 確か、母上の、国の文字? もしかして!! 母上からの『手紙』か!? 青嵐(せいらん)も『内容』を読んだ。 その内容を読んで… また、思わずには、いられない… っ、母上も… 気付いて、いたのかっ… 青嵐(せいらん)も苦しくて、必死に声を殺そうとする。 その手紙の中には… 父上への、『お願い』まで… 書かれて、ある。 これは、つまり… 判っていたのか? 青嵐(せいらん)は、自分の名前まで書かれてある。 その手紙に… そして、皆へと、父をと。 更に先まで… 母上は…っ!! それにも気付いて… これを『事前』に!? 「っ。…」 青嵐(せいらん)は膝を崩す。 声だけ、どうにか圧し殺すように、泣いた。 これは、母上からの願い… そして、これには思いも、あるんだ… 父上だけじゃなく… 俺や… 皆にすら… 青嵐(せいらん)は泣きながらも、思考する。 どうしても、涙が出てしまうが… これが、母上の残したものならば… 『ずっとは泣かないで』 くぅ… 母上が、また最後に残した、『お願い』もあるのだ… その父上が外に行ったのも… そこで立ち上がった。 また母上の姿を見る。 涙は、やはり出ても耐える。 そして、その手紙の意味を思うのだ。 俺は… そして、俺達が…
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