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それは覚悟。
『長の座』を降りてから、更に約8年が経った…
私は『光希だけを一緒』に連れて行動した。
もう数年前から、既に子供達からも離した。
移動を済ませた後、『厳重な結界』を。
私の思考も、術も『全て』使って構築した。
これならば、一族からも、外部からも、『全て』から…
『光希には』触れる事すら出来ん。
そして、私が絶対に叶えてよう。
あの『願い』も…
銀楊は様々にある『全ての高位術』を複雑に応用した。
更にと思考もしながらだった。
そうして構築したからこそ、誰にも場所すら判らない。
全てから『隠し続ける』中でもだった。
銀楊は、『光希の側』にと居た…
**************************
銀楊は『後見』としてだった。
今は『新たな最高議会』の場に居るが…
その『内容のみ』だけを聞き、目を閉じ、思考だけをする。
今はまだ『私から』は何も言ってはいけないだろう…
新たな議会の半数以上…
既に『選抜』で、光希の子ばかりだ。
女児も問題すらない。
最初から…
『後見』としてだが。
私から、青嵐にと『指摘』もしている。
更に青嵐が気付けない部分も教えている。
その上で、青嵐も、皆もだが。
精進すらも忘れずに…
青嵐が、業務も含め『新世代を』纏め上げてる。
既に充分でもあるのにも関わらず…
銀楊は、そう。
かなりの苛立ちを圧し殺していた。
それは未だに、まだ…
ずっと『内乱の傾向』も出続けて、更になのだ。
銀楊は、すぐに気付き。
青嵐にと『指摘』もしている。
そんな中でも、愚かな妖狐も出るばかりの状態にだった。
常に銀楊は、気付き『指摘』もする。
そして規模が大きい時には、銀楊も動いていた。
それでも尚、変わらない『妖狐族』に。
既にもう…
銀楊は苛立ちを隠すのも『限界』にもなっていた。
どうにか、それを顔には出さず。
『今の議会中』でも、また気付いて苛立ちが湧く。
銀楊は内容も聞くが、すぐに『判断』もした。
勿論、青嵐達も常に思考し、動いていた。
必死にと行動すらしてる様子も銀楊は判る。
それが『判る』からこそ、もう…
銀楊は『怒り』を隠しながらだった。
青嵐にと。
『長の青嵐』に言う。
『鎮圧』する為にと、『常に銀楊』が動いた。
銀楊は思う。
こんなにも『愚かな恥』など、私が消してやる!!
そして、この議会の際でもだった。
すぐに銀楊が気付き『指摘』した。
その『指摘』で青嵐も気付く。
そして皆が、動き、議題として纏めていたが…
それは、また『内乱の動き』でもあった。
銀楊は『怒り』をどうにか圧し殺す。
皆が、必死にと動く姿を、銀楊も見た。
更に今回の内容を聞き、既に『内乱の規模も』判った…
銀楊は、そこで『我慢すら限界』もなった。
その場で、すぐに動いた。
私は端的に言った。
「青嵐。
私が行こう。」
青嵐は、また思う。
それは『1つだけ』でもある。
また父上が!?
すぐに察して言った。
「っ!?
ですが、父上!!
また『1人で行く』と!?
今回も、かなり数が…」
顔には一切、出さずに、銀楊も淡々と言う。
「判っている。
…すまないが。
行く事を『許可』してくれないか?」
青嵐は、すぐにまた察する。
「…父上?」
それにも判る銀楊だったが。
どうにか顔にも出さず、変わらず、また淡々と言うのみ。
「今の『長』は、青嵐だ。
私はあくまで、『後見』。
…だが、『指示を出して』欲しい。」
銀楊は思うだけでもある。
隠して居ても、もうどうにも出来ん!!
既に青嵐も私には不審に思ってるだろうが。
それでも私が…
銀楊は、また、どうにか『怒り』も隠す。
そして『返答のみ』を待った。
青嵐も父上の様子には気付いて居るのだ。
でも、判らない!!
なぜ、『全てを隠す』ような…
けれど、父上の言動には『違和感』もだが…
「なぜ…
最近は、少し。」
銀楊は、すぐに言った。
「判っている。
だかな。
私が『我慢している』のを、ぶつけたいだけだ。
…指示を。」
青嵐も、すぐに思考もする。
最善策も、そう…
確かに、父上が鎮圧をするのが早い…
その事実にと、青嵐も判る。
でも…
目を閉じて、青嵐は言った。
「…判りました。
鎮圧を。」
そんな様子を見て…
銀楊も『判る』からこそだった。
「あぁ、いつも、すまないな。
青嵐。」
「…いえ。」
そのまま、私はすぐに転移をした。
**************************
転移した先に着いた銀楊は簡単に見渡す。
やはり、ここから来たか…
つくづく思うが、『愚か』過ぎる。
銀楊は、『それ』を見てだった。
尚更、もう『怒り』が抑えられない。
簡単に、相手の場所や数を『確認』する。
数は約450~500か。
『私から』したら、大した事もないか。
すぐに『判断』も、思考する。
私は、そのまま『敵陣の真ん中』にと転移した。
相手も気付いた様子だが…
もう遅い!!
私は一気に風の高位応用術を、複雑に解き放った。
竜巻のように『全員』を巻き込む。
そして残った者すら容赦なく消す。
銀楊は、そんな高位応用術を使いながらもだった。
怒りが湧き上がりながらも思う。
こんなにも弱く、愚かな妖狐など。
この先になど…
光希の子供達が、先へと。
『正しい道』へと必死に進もうとしてるのに…
それすらも邪魔するのであれば、私は許せない!!
ただ、怒りをぶつけるように…
一気に複数の高位術を使う。
そして『全員を消滅』させた。
銀楊は大きな溜め息しか出なかった。
その時間は、たったの約10分程度。
敵を『全て』消して、また思う。
こんなにも弱いだけの、愚か者が…
絶対に、許せる筈もない!!
あの『光希が命を』削り…
やっと、新しい世代が落ち着き、その皆すらも。
更に精進しながらも先へと。
進もうとしているにも関わらず…
それを邪魔するならば…
許せる筈などない!!
銀楊は、1度、また。
どうにか『怒り』を、圧し殺した。
敵は全て消滅させた。
だが、怒りを抑えても、苛立ちは残る。
銀楊は首を振った。
それでも今は、まだ…
鎮圧を終え、再び転移して戻った。
それは僅かであり、1時間も経たずに全てが終わる。
転移し戻った時に、青嵐にと言った。
「青嵐、終わった。」
「!?」
青嵐は驚くのもあるが、すぐに判った。
な、もう!?
それは高位術で、更に威力までも…
どれだけの力を…
銀楊は、すぐに目を閉じて思考した。
そしてそのまま、端的に言った。
「私は1度。
戻るが、構わないな?」
そう、青嵐は知らないのだ。
今の光希を。
今の場所を。
**************************
銀楊は、早くと思いながらも。
すぐに議会をしてた部屋から出た。
いつもと同じようにと動く中でだった。
「父上!!」
青嵐は、ずっと気になってる事でもある。
それは父上の様子もだが。
どう考えても、理由も判らない事も。
それに父上が普段居る場所すらもだ。
『全て』が詳しく判らない事に。
あれだけの父上の様子。
可能性があるならば『母上』だが…
銀楊は端的に言う。
「どうした?
また、問題か?」
青嵐は、すぐに思考する。
この場では父上は端的にしか言わない。
仕事や、立場もある。
だからこそだが…
どうにか青嵐も言葉を濁して言う。
「いえ、今のところは、計画通りです。
ただ…
『母上』に。
何か、あったのではないですか?
最近の父上は…
どこか…」
「光希は、私が居るから…
問題はない。」
青嵐は明らかに父上がだ。
そして言動にも気付いてた。
父上がどう考えても変だ。
何をしてもだ。
様子が、おかしい!!
苛立ちがあるのも明らかだ。
それに母上に関しても…
これは『結界』も含めてしてる行動だ!!
居場所すら判らない。
更に父上の、この動き…
『判らせない』ようにしてるのもだ!!
これでは…
『わざと』会わせないようにしてる!!
その様子を見て、銀楊は察する。
少し思考し、簡単に言った。
「…青嵐。
ならば、落ち着いた頃に、呼ぶ。」
「!?」
「その際は、連絡をする。」
「はい。」
**************************
私は、すぐに『光希の側』と戻った。
そして優しく触れる。
光希の頬を…
そして確認もする中で…
思う事も『光希だけ』だった。
呼吸はしているな…
最近は、もう…
数ヶ月に『1度』程度しか起きないが。
でも、これは…
光希の『最後の願い』でもある。
ならば、私は叶えよう。
けれど私は、それでも…
僅かに起きた時でも良い。
光希の側に居たいんだ…
きっと『感』だろうが…
光希が、こうなる前に言った事を思い出す。
『子供達には、心配させたくないから…
私と銀だけの、2人だけの場所に行こう?』
私は、また光希にと。
触れながら言った。
「私がきっと、あの時に、気付かせたのだろう?
光希…
私は…」
続きを言えず、私はそれでも『光希』にと触れる。
今更だが、あの後から…
光希は少し…
そう思いながらも、光希の側にと。
ずっと居た。
**************************
銀楊は『青嵐のみ』に連絡をした。
もうすぐ、青嵐が来る頃だろう。
そう思いながらも、結界の側にと。
常に光希からは離れずに待って居た。
「父上っ!?」
その急いで来た様子に気付いて言う。
「あぁ、悪いな。
忙しい中でだろう?」
青嵐は確かに業務を全て振り分け。
急いで来たのもあるが、驚愕する。
こんな場所に!?
それに、これは…
どれだけの『結界』だ!?
青嵐は息を整えながらも思考する。
そこは妖狐一族でも使われない。
『孤島』でもあった。
理由は簡単でもあるのだが…
地形も含め、小さい事もある。
更に全てが絶壁だからこそなのだ。
そんな中で『1つだけ』の家と…
この『結界』は、何だ!?
全く判らないぞ!?
どうにか、父上を見て言う。
「いえ…
父上が、そうするならば。
『母上の件』でしょう!?」
銀楊は思う。
まだ、この若さで、あれだけを纏めている。
更に精進も、ずっと続け随分と。
青嵐自身も強くはなったが…
経験だけは仕方がないだろう。
だが、鎮圧ばかりしてる私には気付いたか。
それに…
これも『今後の為』だろうな。
銀楊は端的に言う。
「青嵐。
着いて来い。」
「はい!!」
私は結界を僅かに開け、2人で家にと入る。
青嵐は久しぶりに見た。
そこには前と『全く姿すら』も変わってない。
美しい姿の母上が寝ていた。
「は、母上っ。」
「もう2か月だ。」
青嵐は、すぐに私を見た。
「なっ!?」
私はまた淡々と言う。
「今の光希は数ヶ月に1度。
僅かに起きるだけだ。
身体には、問題ない。」
「っ!?
では、やはり…」
「青嵐しか、まだ誰も知らぬ。
それと、これは『光希から』の言葉だ。」
改めて、言葉を聞こうと青嵐は父上を見る。
私はそれすら淡々と言った。
「光希の言葉、そして願いだ。
『子供達には、心配かけたくない』と。
『私と2人だけの場所に』と。」
!!?
は、母上が…
そんな…
ならば、あれは、父上が嘘を言ったのか!?
青嵐は、すぐに思い出す。
そう、あの日、急に父上が言った事を。
皆が暮らしていた場所からだ。
そこから移動する際に、父上が言った事を…
「光希の行きたい場所があるから。
しばらく、ここから離れる事になる。
だから、この家は皆が好きに使え。
…それと、1つ。
光希からの言葉だ。
『また少ししたら、一緒に。』と。
だから、呼ぶまでは誰も来るな。」
その後、確かに行き先も皆が判らなかったが…
でも皆は『父上が居る』なら大丈夫だと。
そして皆も気を使い、敢えて聞かなかったのだ。
青嵐は瞬時に思った。
話が違う!?
そんな青嵐を察して言った。
「知ってるだろう?
青嵐。
光希は嘘を言わん。
あれは、『私の』だ…」
青嵐は改めて、また母上を見る。
そして涙が…
涙が勝手に溢れた。
だが、青嵐は止められなかった。
銀楊は、その青嵐にも向かず。
家の入り口の方を見ながら、感情を抑え、話し出す。
「皆は、消耗を知らない。
知っているのは、私と青嵐のみ。
ならば…
離すしか、ない。」
青嵐は、それで…
「だから…
最近、あんなにも…」
そんな青嵐を見ないでだった。
銀楊は話を続けた。
その声は、何もないように、淡々と…
「私はな。
許せないだけだ。」
「っ!?」
「私が、ここに連れてきた事も。
青嵐達が正しい道を行く邪魔をする輩も。
…光希が。
命を削ってまで、産んだ子の邪魔など、させたくもない。」
青嵐は気付く。
そしてまた、父上を見た。
今っ!?
その言葉は…
銀楊も察した。
全部をと、話すつもりでもあるからこそ、続けた。
「青嵐は知らない事だろう。
私がなぜ、光希を知っているか。
そして、なぜ、『連れてきた』か。
だろう?」
そう、まさに、そこだった。
けれど青嵐は何も言わなかった。
父上がまだ、何かを話そうとする事が判ったからだ。
そのままの姿勢だが、銀楊は言った。
「私はな…
光希が、『産まれた時』から…
知ってるだけだ。」
!?
青嵐は動揺する。
何だと!?
それでも銀楊は青嵐を見なかった。
「光希が産まれた時。
やはり一族は、すぐに攫おうとした。
『私がそれ』を、力で、ねじ伏せただけだ。
そして18年間。
せめて、人の世に産まれたならばと。
その人の世でも、『常に私が』守って居た。
そして産まれてから、18年が経ち。
『私がここ』に、妖狐の世界に、連れてきた。」
青嵐には言葉も出ない。
それでも思考だけは止めずに聞く。
「だから、光希は人を疑わない。
悪意も知らない。
危険を知らない。
それらは『私が全て』排除した結果でもあった。
だが、ここに連れてきてからだ。
光希は、『初めて』狙われる恐怖を知った。
最初はそう、私が自覚もさせた。
それからも、ずっと守ってきた。
だから子供達は誰も知らない。
『光希』を、私が知ってるのは…
常に判るのは、当たり前なだけだ。」
青嵐は何とか理解は出来ても…
どうにか出した言葉も上手く続かなかった。
「では…
ずっと。
産まれた時から…」
銀楊は目を閉じた。
そのまま続けた。
「あぁ…
だがな。
だからこそ、私は『後悔』もしている。」
「っ!?」
「最初、ここに連れて来たのは、『私だから』だ。
私が先に気付いていれば…
身体だけの消耗ではないと、見抜いていれば。
これだけの、負担も、させなかっただろう。
私はずっと、見てきたのに…
歴代の違いに気付いたのも、そうだ。
ここに連れてきたばかりの頃は、気付いてなかった。
ただ、『愛する事』をした。
歴代のようには、したくなかったからだ。
だからこそ、私は『光希の心』を求めた。
そして受け入れて貰えた時に、歴代の違いに気付いた。
それもだ。
これは『言えない真実』だと、すぐに気付いた。
だからせめて、負担も減らそうとしたが…
光希は私の子を産む為に、こんな『代償』を。
受ける事に、私は見抜けなかった…
もう『私が、私を許せない』だけだ。」
青嵐は思う。
違う!!
父上のせいではない!!
今までが逆なのだ。
気付ける筈もない!!
こんな、『真実』など…
青嵐は動けずに…
それでも父上の話を聞く。
銀楊も動かずに続ける。
「私が判っていたら…
連れてこなければ…
そうなれば、妖狐は絶滅。
けれど産まれた『子』は皆が天才児。
ならばと、基盤をと、邪魔者すら、常に消した。
女児を産む前を…
お前も、知っているだろう?」
また青嵐は、すぐに記憶が蘇る。
母上と初めて会った、あの夜!!
だが声が、どうしても上手く出なかった。
「っ!」
銀楊は動かなかったが察した。
「そうだ。
あの時に、私は青嵐に警告したな。
だが、あの怒りは、お前だけにではない。
あれは、私自身への、怒りだ。
あんな愚策でしか、避けられなかっただけの事。
光希がなぜ、強い子を産むかを、皆が知らん。
既に身体の負担があるのに、それも私しか、知らん…
私が出した、愚か過ぎる策にも、周りは気付かん。
ずっと、守って居たにも関わらず…
たった3年だ。
それも傷を付ける結果。」
銀楊は目を閉じたまま続けた。
「これは予測だが…
あの後、暗示に気付いたからだろう。
だから、『光希』がだ。
『女児を望んで』産んだのだろう。
意図して女児を産んだ時すらも…
死ぬかもしれないにも関わらず…
それすらも、私は見抜けなかった…」
青嵐に、また衝撃が走る。
そんな事すらも構わずに銀楊は続けた。
「そして女児を産むからと、また『光希』にと群がる。
そんな愚か者すら、まだ居た。
けれど、青嵐が纏めた事で…
そんな中でどうにか、暮らせていたにも関わらず。
私がそれでも、気付けてなかった。
そして些細な事から、私は『仮説』を出した。
その事にどうにかしようとして…
青嵐に調べさせた。
だが、私は仮説が明らかになった時。
なぜ、妖狐が『長命』であるかすら判った。
それは女児への代償を。
『本来の形』ならば、成り立たせるからだ。
そして私は、光希に産ませない為にも。
長を譲り、光希を遠ざけた…
それすらもだ。
既に遅過ぎただけの事。
こんな結果になるならば…
私が先に気付き、見抜けていれば…
変わっていたかもしれない案は、今なら浮かぶ。」
動かないが感情的になり、銀楊は声だけを荒げた。
「だからこそだ!!
私は、私が許せん!!
そして産まれた子の邪魔など、更に許せん!!」
銀楊は、またどうにか圧し殺す。
感情を、けれど続けた。
「これだけは言える。
妖狐族は、滅びるのが当たり前だ。
こんな記録すらもなく、更にずっと愚かな道を続けた。
だが、少なくとも…
光希が産んだ命ぐらいは、守るしかない。
犠牲になった歴代も同じだ。
正しい方へと、流すしか、私には出来ん。
今の妖狐など、『恥』ばかりでしかない!!」
銀楊は、ようやく少し身体を動かした。
そして、光希の方を見て言う。
「私は、『光希の最後まで』は、ここに居る。
だが、青嵐達が正しい方へ行くならば…
手を貸している。
その後は、好きにすれば良い…」
銀楊は下を向いた。
そしてもう、思うままを完全に言い切る。
「私はもう…
限界だっ!!」
青嵐は初めて聞く。
こんな父上の声を…
下を向き、顔すらも隠す姿を。
そして、この話を『全て』聞き…
青嵐すら、判った。
どれだけの『痛み』かを。
「ち、父上…」
そんな、ずっと…
痛みすらも、ずっと隠し続けて…
青嵐は、もう、その痛みを、苦しみを。
どうにかしたいが、判らない…
銀楊は、そんな青嵐を見る。
そして、ふと、また光希を思い出す。
「不思議な話だな。
青嵐。
私はな、光希には何も言わなかった。
仕事の事すら、光希は聞こうともしない。
けれど、ここに来たばかりの頃だ。
光希は、見抜いたんだ…
私が痛いのは嫌だと、泣いた…
あの結界をした家でも同じだった。
何も言ってないのに、光希は気付く…
青嵐の暗示にも、すぐ、気付いた。
そして私にまで、光希は気遣った。
私のせいではないと気付き、許して、どうにか私にと。
そんな光希を、死なせたくなくて。
あの時すらも、かなりの無茶な事をしたが…
結局、全部が!!
私の子の為にと、光希を削り続けてた!!」
青嵐は鮮明に思い出す。
「っ!」
あの母上の泣き顔を。
あの痛みを隠す父上を。
青嵐は震えながらも、下を向いた。
そして思わずにはいられなかった。
どれだけ、俺は!!
何も、気付けてなかったんだ!!
18年も守り、その後もずっと守り…
最初にまた…
傷付けたのは、俺じゃないかっ!!
っく。
どうにも出来ない後悔しか浮かない。
今ならば、なぜ…
あの父上が、母上だけ特別かなんて、明確だ。
産まれた時から、守り続けてたのだから。
銀楊は、そんな様子も察した。
だから、もう『本心』を言った。
「青嵐、最後に言っておくぞ?」
青嵐は、その声で僅かに顔を上げた。
銀楊は全て言うつもりだった事もある。
だからこその『本心』をだった。
「お前が悪い訳ではない。
私が最初に、光希を。
姫を望んだのは、もう『500年以上』も前だ。」
なっ!?
青嵐は更に衝撃を受ける。
そんな青嵐を見て、銀楊は、また目を閉じて言う。
「私はな…
自分の母を、見た。
『壊れた母』をな。」
青嵐は愕然となる。
それはっ!!?
ま、さか…
銀楊は、目を閉じて、僅かに思い出すが…
どうにか、そのまま言う。
「あぁ…
そうだ。
繁殖にと、使われた母だった。
それを見た時からだ。
私は、あの母を見てな。
許せなくもなった…
そして、その壊れた母にと誓った。
私は『こんな選択』はしないと。
それから長を目指し、更に力を高め続けた。
そんな中で、ずっと姫を待った。
そして産まれた姫が、『光希』なんだ。」
っ!?
誓ったと…
それで、母上を…
銀楊は僅かに目を開けた。
けれど、その目は余りにも…
何も見てない、そんな中でもだった。
「だからこそ、私は繁殖に使いたくないと。
光希の心を、どうにかする為にと、した結果だ。
青嵐のせいでもないのだ。
私の方が、18年間。
光希を知ってるのだ。
最初、私は光希の心を求めたのもあるが。
どうにか思考しながら、どう動けば良いかを。
そして守る為にもだ。
その結果、光希も、私へと向いてくれた。
確かに、喜びは強かった。
だが、どうだ?
結果として私は、光希の命を削り続けていた…
余りにも、愚かな結果だ…
最初に気付いていれば、見抜いていれば…
いくらでも変わってた『光希』を。
ここまで削り続けたのが、『私自身』だ。」
銀楊は、また下を向いて、感情を圧し殺す。
「青嵐は…
私のようには、なるな…
少なくとも、姫の同意、そして時間もある。
妖狐は長寿、ならば歴代も、光希の犠牲もなく。
進める筈だ。
だから、全てを話しただけだ。」
青嵐にとって、この話は衝撃的過ぎた。
そんなっ!!
500年以上も!!
ずっと…
ずっと、痛みにすら耐えていたのか!!
そんな事を…
青嵐は父上すら見れずに目を閉じた時だった。
ふと、頭の中に母上の笑顔が浮かんだ。
それで青嵐は気付く。
これは…
違う!!
そこで青嵐は、やっと思考も巡った。
そして目を閉じたままだが、父上にと言葉だけだが言った。
「違います…
父上…」
違う、だと?
その言葉で、銀楊は青嵐を見た。
青嵐は目を閉じたままだった。
「母上は、確かに命を削ってたかもしれません。
自覚もなく、していたかも、しれません。
でも…
それは、違う!!」
その時に青嵐が目を開けて父上を見た。
銀楊の方がだった。
その言葉が、意味が…
判らない…!?
青嵐は思い出す事もあったからだった。
だから、判った!!
「母上は、父上を本気で愛していた。
父上だって、それは判る筈だ。
そんな母上が、今の…
今の父上を見たら!!
何て言うか、判るでしょう!!」
銀楊の方が思考が巡らない。
けれど動揺する。
青嵐は思考を続けならが、それでも言った。
「あの母上を、俺は確かに父上より…
知らないかもしれない。
だけど、母上は、父上だからこそ!!
父上の為ならと…
父上しか、求めていなかった!!
俺じゃない。
父上にと、手を伸ばした…
忘れてなど、いない筈です!!」
銀楊は、それであの日の夜を思い出す。
それでも…
思考が巡らない。
青嵐は思い出す。
だから、強く言った。
「あの時、俺は知った。
母上は、父上だけを愛していた。
父上だけに『心を』許した。
あの母上が、父上がどんな策をしようと…
父上よりも…
母上が、父上を愛した結果だっ!!
そんな母上が、今の父上の姿や、言葉を聞いたら…
どうなるか、判らないのですか!?」
「っ!?」
青嵐は、父上の目を見た。
「絶対に、あの母上なら…
今の父上を見たら泣く。
今の父上の言葉を聞いたら…
その方が、あの母上は傷付く!!」
銀楊は動揺した。
ずっと自分を責めていた。
にも関わらず…
青嵐の言葉に、何も言えなかった。
「確かに、母上は身を、命を削っていた。
けれど、それは『父上を愛していた』からだ!!
父上だけを思って、父上の為にとしていたのに…
それなのに、今、そんな言葉を。
母上が起きた時に、言えるのですか!?」
「っ!?」
青嵐は涙を拭い、父上を見た。
明らかに動揺しているのが判った。
「今の言葉を、後悔を。
母上が目を覚ました時に、言えますか?
言えないでしょう!!
言ったらどうなるか、父上なら判る筈です!!」
銀楊は驚愕する。
青嵐の言葉は、その通りなのだ。
僅かに起きた時に、あれを、言ったら?
光希は…
「俺はこれからも、絶対に変えるとも。
父上の前でも『誓った』事も。
それも、忘れましたか!
母上ですら、俺を選んだ。
父上ですら、俺を選んだ。
だから俺は絶対に、正さなきゃいけないんだ!!
あの母上が愛して、更に父上が愛してなければ…
俺は産まれて居ない!!
その2人が…
まして、父上が、母上にそんな事を言える訳がない!!
そして母上すらも、そんな父上を、見たら…
絶対に泣くに決まっているっ!!」
銀楊は何も言えなかった。
青嵐の言葉は、正しいからだ。
「っ!?」
青嵐は涙を堪えて父上を見た。
500年以上もずっと耐えて…
それでも、母上と!!
「母上だって、同じだとっ!!
『犠牲扱い』だと!!
父上が言って良い筈がない!!」
青嵐は感情が溢れ、一気に妖気も出し、威圧をした。
「っ!?」
銀楊は僅かだが、耐えられなくないが一瞬、圧された。
それにも自分自身、驚くが…
どうしても思考の方が、巡らない。
そんな青嵐は父上を完全に睨んで大きく言った。
「例え、父上でも、『母上の侮辱』など許さない!!」
銀楊は咄嗟に防御術を出した。
「っ!」
防御は簡単だが、内心、動揺したままだった。
青嵐の言葉に、反論できない。
けれど…
僅かに言う。
「…光希が。
泣く…?
だが、…っ!!」
銀楊は感情が抑えられなかった。
反射的に、すぐに高位術を使い、青嵐に出してから言った。
「っならば!!
光希に、どう謝れば良い!!」
だが青嵐は、その高位術を弾いた。
「っ!?」
銀楊は、やはり動揺する。
そんな青嵐は言い切った。
「謝れば良いのではない、『逆』だ!!」
青嵐も一気に、高位術を銀楊へと出した。
動揺はしていたが、銀楊も咄嗟に弾いた。
術は大した事もないが、動揺はしたままだった。
逆…だと?
「母上に、言う言葉は謝罪じゃない!
母上が求めているのは、父上の…
『父上の感謝』だっ!!」
青嵐は感情的になり、特殊すらも纏った。
更に高位術を使って父上にと出した。
それに銀楊はすぐに気付き、咄嗟に防ぐ。
「っ!?」
銀楊は弾くが、でもこれは反射的な事だけだった。
思考が巡らない、追い付かない。
単純な反射行動なだけでもある。
でも僅かに言う。
「…感謝、だと?」
銀楊は、まだ上手く思考が巡らない。
そんな父上を見ながらも、青嵐は言い切る。
「愛していて、愛されたにも関わらず…
母上が求めているのは、謝罪じゃない!!
違う!!
母上ならば、絶対に父上を責める訳がない!!
あれだけ信じて、あれだけ愛していた。
そんな父上の姿を、見たら、母上が悲しむだけだ!!」
そこで銀楊は、目を閉じた。
言葉なども浮かばないが…
「………」
銀楊は、光希の事を。
何度も記憶を浮かべ、何度も思い出す。
そして、思考の結果を…
「…すまなかった、青嵐。
確かに、光希は、泣く、な…
私は…」
青嵐も妖気を下げた。
深呼吸をして、父上を見たままだった。
銀楊は、そして少し目を開ける。
答えを出した…
「そうだな…
光希が、泣く、な。
あぁ…
青嵐の方が、正しい、な。」
私も『覚悟』をしなければ、ならないのか。
そこで、ようやく、思考が巡る。
そんな父上を、青嵐は涙を耐えて言う。
「父上…
ずっと、母上が起きないから…
悲しむのは、判ります。
でも、今の父上を見たら…
母上はもっと、悲しむ…」
その姿を見て、銀楊は、また目を閉じる。
様々な思考を巡らせる。
光希なら…
光希だったら…
そしてゆっくりと目を開けてから、呟く。
「そうだな…
光希が…
悲しむのは、見たくは、ないな。」
銀楊は思考して出した結果でもあった。
そして出された、答えでもあった。
「判った。
私も…
『覚悟』を決めよう。」
そう、光希が望むものを…
「私は…
『光希が』だ。
望む道を、繋げたものを。
私が、守ろう…」
銀楊は、それでも、やはり『光希の事』を。
考え出した行動と、思考の答えだった…
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