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真実を、そして未来を。
銀楊も『手紙の内容』は、既に暗記していた。
外に出てから冷たい風を浴びる。
既にもう夜だった…
そして、やはり思わずには、いられないのだ。
光希…
最後まで…
私の方が、見抜かれていたか。
光希には、やはり。
『敵わない』な…
『1人じゃない』か…
あぁ、でもなぁ…
例え、1人じゃなくても…
私は、光希?
光希だけを愛してるんだ…
だから…
光希の声を、聞きたいんだ。
光希に、笑って欲しいんだ。
光希が側に、居て欲しかったんだ…
ただ空を眺めながら、そう何度も思ってた。
でも…
あそこまで見抜かれてたのか…
今更、隠しても仕方がないよな?
なぁ…
光希…
銀楊は目を閉じたままだった。
**************************
「父上。」
その声を聞いた。
空を見上げたままだった銀楊だが思う。
青嵐から、来たか…
銀楊は目を閉じたまま思考する。
そして少し、独り言のように呟く。
「あぁ。
本当に…
光希には『敵わない』な。
まさか、あそこまで。
私が…
心配をさせてたのだな…」
思考が纏まる。
これが『光希の望む』ものならば…
そこで目を開けた。
視線だけを向けて言う。
「青嵐。
頼みがある。」
青嵐は、その視線を受け返事をする。
既に『当主』など、もう関係もなかった。
今は父上を。
母上からの頼みもある。
それだけだった。
だからこその対応を。
「はい。」
そんな青嵐にも察する…
銀楊は、まず先にする事を優先して言った。
「我が子を。
『全員』だ。
ここに、集めてくれ。
そして、もう…
隠さず『全て』を告げよう。
『全員に、真実』を、伝えよう。
少なくとも、光希は…
『私と子供達』でと書いてある。
『皆』が、知るべきだろう…」
「はい、父上。」
すぐ青嵐は返事をし、連絡を出した。
既に青嵐は情報網がある。
『新世代』を纏めている。
そんな青嵐からしたら…
皆へ連絡は簡単でもあった。
**************************
青嵐の連絡を受けた事でだった。
約1400人以上が一斉に動き出す。
多くもあるが…
『女児以外の全て』である。
急いで指定場所に向かった。
『皆が同じ』だった。
『母上の事』を思っていた。
女児は今度も踏まえて、既に厳重にしてあるゆえだった。
今は長命の妖狐では若過ぎるゆえの処置。
既に別の形の体制は作られていた。
その為、女児以外の『全員』が集まるのを。
銀楊は何も言わず…
夜空を見上げながら待った。
**************************
青嵐の指示で指定場所に…
皆が集まって来る。
銀楊も気付く。
皆が…
光希の子供達、全員が集まる中。
その反応もだった。
急いで来た皆も母上の姿を見た。
また懐かしくもあるが…
何も変わらないのだ。
けれど固定術式の『意味』も判る。
だからこそ『最後の母上』だと…
本当に眠っているように穏やかな顔で美しく…
そして、その姿を見ると…
皆も同じだった。
勝手に涙が溢れてしまう。
どうしても泣く…
そこには母上からの最後に残した『手紙』もあった。
それにも皆が、それぞれ読んだ。
そう、母上の子供である自分達にとって…
『全員』がだった。
皆も『その文字』を読めるのは当然でもある。
人間社会の勉学で皆がまず先に覚えていたのは…
『母上の出身地』からだった。
その手紙の内容も、また…
あの母上らしいものでもあり…
けれど母上の死、母上の言葉を。
皆が受け止めるも泣く事は止められない。
意味も、内容を、理解はしていた。
そんな様子の我が子を見ながらも銀楊は…
先に『青嵐』へ視線を送る。
数時間も経ってなかった。
視線のみで皆が集まった事も知ると…
銀楊は、また『覚悟』をするように。
皆へ向かって言った。
「皆に、聞いて欲しい事が、あるんだ。
これは…
『光希の願い』でも、あるから。
聞いて、くれ…」
すぐ皆がだった。
明らかに、もう既に父上の声が違うのに気付いた。
またすぐ『母上の手紙の内容』が浮かぶ。
だが、先に話しを聞こうと。
皆が一斉に静まり、父上を向きながら動きを。
言葉を止めて待った。
銀楊は、そんな我が子達を。
少し見るが…
やはり下を向いてから話し始めた。
初めて銀楊は『全ての事』を話した。
光希の…
『最後の言葉』もだった。
それだけではなく『全ての真実を皆』へと話す。
自分が500年前からの事も。
光希を産まれた時からの事も。
命を産む『代償』の事も。
何もかも…
『全て』を話した。
**************************
皆が父上がしていた事を。
話を聞いて理解も早く…
その内容が判った。
だが、それは…
余りにも衝撃的な『真実』でもあった。
全ての謎すら含まれていた。
父上にある500年以上の『痛み』を。
最強である『強さの理由』を。
『母上だけ』を。
愛する理由も…
更に『母上の命』を削ってまで産まれた自分達を。
そして最後まで『2人が愛し合っていた真実』まで。
知っているからだった。
判ってしまうのだ。
それは…
どれだけだったのかと!?
皆が様々な思考をする。
話の内容は充分に理解していた。
けれど…
銀楊は皆を察して先にと言った。
「私はな。
光希が、居なくなったら…
実は、もう…
この場から、去ろうと、思っていた…
光希の居ない…
そんな妖狐の世界になど、居たくなかった。
私が、耐えられなかった。
もう…
『限界』だった。」
皆も、あれだけ両親2人の思いを。
愛し合っている事を知っているからこそだ。
すぐ、その気持ちも判った。
更にでもある。
それは父上からすれば『500年以上』だ。
そんな中で、ずっと…
していた事も含めている。
『真実』であり、また『事実』でもある事だった。
だが、銀楊の方が既にもう…
我が子を察する事も出来なくなってた。
それよりも、ただ『耐える事』に必死でもある。
そして言葉を、何とか、選んで言う。
「だが…
私は先に。
青嵐の言葉で、気付かされた。
『覚悟』をな…
そして、光希の『手紙』だ。
何も、私も、言ってないのに…
あれだけ、見抜かれていた…
それにも、驚きは、あったが…
けれど…
手紙にも、あったな…」
銀楊はそれでも痛かった。
苦しくもなる。
頭の中に浮かぶのは『光希の事』ばかりだった。
認めたくない!!
そんな事は…
光希がもう…
そんな事は、認めたくもない!!
どうしても『光希の事』ばかりが浮かぶ。
それでも…
光希が、居ない…
だが、光希が…
それを、『願う』ならば…
皆が、既にもう気付いていた。
明らかに、父上の様子が違う!!
そしてもう…
母上の残した『手紙』にもある。
だから、『頼んだ』のかとも思う。
だが、今は…
『言葉』ではないのだ…
銀楊は、ただ、下を向いて…
耐えながらも、言葉を探すしか出来なかった。
これは、『光希の望む』事だ。
これは、『光希の為に』しなければいけない。
**************************
銀楊は目を閉じたまま…
下を向きながらも、何とか言葉を続けた。
苦しくもなる。
『痛み』が更に広がるような感覚だった。
けれど、それでもと…
どうにか『言葉』を出す。
「だが…
私は、残ろう。
『光希』が、最後に…
『託した』ものを、未来を。
…書いて、あったな?
『皆』でと、あの『手紙』に、あった。
だからこそ、全て、話した。
これから先、この『真実』を知り。
更に、纏めていくのは…
青嵐を、筆頭にしながら。
お前達の、『新しい世代』だ。
私が、出来る事は…
もう、『力』を貸すぐらいしか。
出来ん。
それでも…」
1度、止めた。
『痛み』に耐える。
息を、どうにか吐いた。
銀楊はもう。
『光希の事』ばかり…
それでも、どうにか言わないと…
それだけを考えながら、耐える。
「…『光希の願い』、だ。
これが、叶うなら、私も、手を貸そう。
手紙にも、書かれて、あった。
『皆で支え合って』と。
我が子、全員に対して…
だから、これから先を、知る事が、先だった。
そして、皆が、これからを、先の未来を、一族を。
『光希』が…
願っているのなら、私からも、頼みたい。
これからの、『未来の為』に。
皆が支え合い、変えて、いってくれ。
その時に、『力』が必要ならば…
私も、手を貸す。
その為に、私はまだ、ここに、残ろう。」
皆がもう見てられなかった。
それが余りにも…
声だけでもないのだ!!
徐々にもっと、痛々しくなっていく父上の姿を。
それに…
母上の『手紙の内容』に書いてある!!
どれだけ!!
もう、これ以上…
『痛み』を隠すのか!!
皆は一斉に父上の側に近付いた。
そして言うのだ。
誓うようにと。
「「「父上!必ず!!」」」
そして、近付いたからこそだった。
また気付いてしまった。
あの父上が…
もう既に、苦しそうに…
『泣いている』事に。
声だけ、必死に出さず…
それでも下を向きながら、ただ…
もう涙を流している姿に。
皆がまた必死に思考をする。
母上から頼まれているのだ!!
だが、どうやれば…
『父上の痛み』を、苦しみを、どうすれば…
母上が居なければ…
それなのに、自分達がどれだけ…
皆も必死に思考はする。
どうすれば、母上の残した『願い』を。
父上に、どう…
そんな中で、耐えながらも…
何とか青嵐が涙を堪えて言った。
「父上…
皆が、悲しいのです…
だから、『隠す必要はない』でしょう?
それに、これは、母上からの言葉。
『ずっとは泣かないで』と。」
青嵐も必死に耐えていた。
涙も堪える。
更に思考もする。
あの母上から…
『お願い』もされているのだ!!
だからこそ、必死に思考する。
どうすれば…
銀楊は、もう、涙が止められなかった。
それでも、どうにか必死に声だけを殺しながら…
既に思考すらも上手くいかない。
だからもう…
青嵐の言葉にと。
そのまま思う事を言った。
「あぁ、判っては、いる…
だが、どうすれば、良いか。
『知らない』のだ…
私は、『光希以外』に。
ずっと…
誰にも、どこでも、自分すらも。
気付けずに…
ずっと、生きて、きた。
だから、ただ。
知らない、だけだ…」
皆の方が普段を…
父上を見て、知ってるからこそでもある。
今の姿が…
父上の余りにも…
それでも『痛み』に耐えようとする。
そんな痛々しい姿を見ていられなかった。
これがきっと母上が、心配した『理由』だと。
『理解』出来てしまう。
500年以上も、ずっとだ。
誰にも気付かせずにいた父上…
余りにも痛々しく、泣いている。
だが、父上が、母上だけを…
どれだけ愛していたかだけ、皆も充分に知ってる。
だからこそ、必死に思考をする。
どうすれば…
青嵐が、どうにか『言葉』を探す。
そしてまた、浮かぶ言葉をそのまま言った。
「母上が、悲しむのを…
父上なら、しない…」
『その言葉』で、銀楊は思う。
今、もし、光希が…
側に居たらと考える。
もし、光希に、こんな姿を見せたら…
また、『光希が泣いて』しまう。
もし、今、この場に光希が居たら…
息を大きく吐い出した。
そして銀楊は何とか、言った。
「あぁ…
そうだな…
『光希』が、見たら…
『泣く』だろう。」
そしてどうにか、感情を落ち着かせる。
再び、大きく呼吸をし、思考する。
そして誰でもなかった。
目を閉じたまま、言うのだ。
「ならば、私は…
『光希の事だけ』を、考えて、動こう。
側に、居なくても良い。
だが、それでも…
『私は光希の為』に。
これから、動こう。」
言いながら、自分に言い聞かすように。
頭の中で、『光希だけ』を浮かべる。
そう、もう光希が側に居なくても。
『私が忘れる事』もなく、目を閉じれば…
『光希の姿』が浮かぶ。
その光希が望んでいる事を。
そして、銀楊はまた、目を開けて皆を見た。
既にもう、心配そうに…
必死に思考していたであろう我が子達を。
もう隠す必要はないのも事実だろう。
だから、素直に皆の方へと言った。
「すまなかった。
そうだな。
今更、隠す気はない…
私は…
『光希が見てる』と思えば…
それで、良い。」
銀楊は少し、目を閉じ思考する。
『光希の願い』を叶える為に。
何をするかだった。
そして目を開けてから、『皆に』向かって言い切った。
「私にあるのは、『力』だけだ。
ならば、『私も皆を』支えよう。」
そして『青嵐』を見る。
「青嵐。」
「はい。」
「今は、お前が『長』だが、これからの道を作るのも。
青嵐が『長』の名を使うだけで良い。」
そして、他の我が子、『皆に向けて』言った。
「光希の願いを、叶える為にも『皆』でだ。
『皆が同じ』意識、『青嵐と同じ』だ。
自分に『長』の名がなくても。
全員で同じ。
『長』だと思い、『長』と同じであると行動を、思考を。
そうすれば、いずれ流れも、絶対に変わる筈だ!!」
目を閉じて、続けた。
「私はもう、『光希だけ』が、居れば…
だから、『皆』の邪魔をする者。
『力』が足りないのであれば、必ずだ。
私が『皆』を助けよう。
支えよう。
そしてこれからを。
妖狐族を変える為にも、『皆』も力を貸してくれ。」
全員が一斉に片膝を地面につけてから言った。
「「「はい、必ず!!」」」
その声で、銀楊は、その我が子達を見た。
けれど再び、目を閉じる。
銀楊は思う。
そう、これで、良い。
私はもう、『光希の為だけ』に動こう。
私が『皆』を支える事。
それが、光希の望む。
答えにも繋がる筈だと…
**************************
その後、『全てが団結』した。
そして変わっていく。
時には銀楊も指摘を、指導もする。
更に『力』が不足ならば…
銀楊自ら、鎮圧も厭わなかった。
誰でもない、『光希の為』にと。
そして女児も含め、教育も進めた。
事例としても、既に光希が居ないのなら…
『後世』へと…
それも残せば良いのだと、『全てを記録』する。
そしてそれを、『全て』残しながらも先へと進める。
全て、これからの未来へと。
それぞれが『団結』しながら、進めていった。
そして、常にそれを広げながらも巻き込む。
皆の誰もが『意思』を変えない。
子供達の意思。
それは以前と同じにもなっていた事もある。
「父上のしてきた行動に『敬意』を。
母上から産まれた『誇り』を。」
それぞれが『団結』しながらだった。
これから先も含めて、一切、変わらなかった。
そのまま長い時が、流れていった…
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