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リスタート
「…………は?」
何が起こったのか理解ができない。僕は確かにトラックに轢かれて死んだはずだ。夢オチなんてありえない、あの時の体が引き裂かれるような、破裂するような痛みが夢じゃないと証明している。
僕は目を擦り周りを見渡す。
周囲はガヤガヤと騒がしく、僕なんかには目も向けない。石造りの建物が並び立ち、その前には露店のようなものが出されて随分と賑わっている。僕はどこかの市場のような場所の真ん中に気がつくと突っ立っていた。
周りを更に詳しく観察する。建物の作りはまるで中世のヨーロッパのようだ。奥の方には馬車のようなものも通っているが、それを引く生き物は今まで見たことない生き物でトカゲと馬を足して二で割ればあんな風になるだろうか。
それに、周囲を歩く人々の姿が僕の知るそれとは大きく異なっている。普通の人の服装は勿論、それに加えて、頭に動物の耳の様なものがある人物や尻尾が腰の辺りから伸びてる人が大通りを何気なく歩いていた。
まるでファンタジーの世界のような……。
異世界転生という言葉が脳裏をよぎる。あまりにも幼稚で馬鹿馬鹿しいが、トラックに轢かれて、気づけば知らない土地へなんて小説の中でしか聞いたことがない。
夢だと思いたいが、肌の感覚や周囲の喧騒がどうしようもなく現実を主張してくる。思わず頬を大きくつねってみるが、しっかりと痛かった。
もし、転生だというのならば色ぐらい付けて欲しかったものだ。僕の願いは届かなかったのか、相も変わらず視界は白と黒だけで構成されていた。
さて、現実逃避をしてても仕方がない、ここが異世界なのか、はたまたタイムトラベルをしたのか。それとも僕の夢なのか。
それに僕も男の子だ、今の状態に少しワクワクもしている。誰しも一度は憧れるシチュエーションだ。
「せっかくなら楽しんでいこう」
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