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しかしまあ、どうしたものか?
僕の格好は学校帰りだった為、ワイヤシャツに学生服のズボン。それに鞄の中にはノート数冊とスマホぐらいだ。教科書?そんなものは学校に置いてきた。
近くのお店のショーウィンドウを鏡にして、姿を確認してみる。そこに映るのは轢かれる直前の僕の容姿そのまんまだ、実年齢より少し幼く見られる顔に加え、中肉中背で少し癖のある髪。特に変哲もない、どこにでもいる日本人の高校生と言った感じだろうか。
異世界転生といえば、魔王を倒して世界を救うストーリーが王道だけど、世界を救うにはあまりにも頼りなさ過ぎる。
その後、近くの露店に行って試してみたが、日本円はここではなんの価値もないようで、円を見たことも聞いたことがないようであった。その露店ではこれまた見たこともない果物のような物を売っており、ここが異世界というのにも真実味が増してきた。
どうにも、ここの世界の通貨は銅貨や銀貨のようなもので統一されてるらしい。しかし、吉報もある言語でのコミュニケーションは可能であったことだ。これで言葉まで通じなかったら本当に詰んでた。
無一文の15歳が1人で生きていけるほど、世界が甘くないのは知っている。ましてや色盲というデバフまで掛かってるのだから更に困る。
「そもそもこういうのって何か凄い力授かって、無双していく感じじゃないの?何でマイナスからスタートしなくちゃいけないんだよ……」
とりあえず金だ、お金がないと生きていかない。
こういうファンタジーとかじゃあ、冒険者的なギルド的なやつがあるのが相場だし、それを探すのを目標に行動してみるか。無ければ皿洗いでも何でもして、お金を稼ごう。
そう思い動き出そうとしたその瞬間、僕の視界に色を纏った蝶々が映り込んだ。
時間が止まったような気がした。
僕はあまりのことに言葉を無くして、立ち尽くす。
「なんで……色が見えるんだ……」
それが何色なのかを僕は知る術がない、でも僕は初めてそこで色がこの世界に存在している事を知った。
その蝶はフラフラと人混みを縫うように進んでいく。
「おい!待て、待ってくれ!」
僕は思わず駆け出しす、この機会を逃す訳にはいかない。その時にはもうここが異世界だとか、ファンタジーだとかもうどうでもよかった。僕はただこの白黒の世界に色彩を求める。
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