色彩の魔女

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色彩の魔女

 外見も壮麗であったが、中の造りも見事なものであった。建築についての知識はないが、それでもこだわって造られた事が感じられる。  そんな屋敷の一室、客室のような場所に通されて紅茶のような良い匂いのする飲み物が出される。 「さてさて、自己紹介をしよう。私が何者で君が誰なのか。まあ私の方は良くも悪くも有名だから聞いたことはあるだろうけど」 「えーと、まだ状況が飲み込めてないんですけど」  「君は私の家を訪ねて、私はそれを招き入れた。そしてお互いに初対面となればやる事は一つじゃ無いかな」 「それで自己紹介と……」  言ってる事は分からなくもないが、初対面の男。しかも、自分でもいうのも何だけど、家の前でウロウロしていた怪しい人物に対して、するものではないだろ。 「私の名前はエレノア・ツヴィエート、世間からは色彩の魔女と呼ばれている。さて、君の名前は?」 「僕は……」  どうしようか、前世と言っていいのかは分からないけど前の名前は確かにあるが、ここでそれを名乗るのは果たして適切なんだろうか。  一度死んだ身だ、折角なら何か新しい、自分らしい名前を名乗りたいところである。 「……僕の名前はノワール、ノワール・ブランです」   僕は白黒を名乗る事にした。ノワールは黒、ブランは白を意味する言葉だったはず。しっくりくる、僕にはぴったりな名前だ。 「ノワール君ね、じゃあノワ君とでも呼ぼうかな。君も私のことは好きに呼んでいいよ」 「えーと、じゃあエレノアさんで」 「えー、あまり面白味がないな。もっと親しみを込めてエレちゃんとかどうだい?」 「流石に初対面でそれは……せめてエレさんでお願いします」 僕には初対面の年上の女性をちゃん付けする勇気はなかった。 「まあいいか、じゃあそれでいこう。私も久々に人と話してテンションが上がってしまった」  なんとも掴み所のない人だ、テンションの上がり下がりが激しいというか、情緒が不安定というか。それに中々初対面なのにグイグイくるから、ペースが乱される。
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