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「君がかなりの世間知らずなのは、私の名前を聞いて驚かなかった事から何となく察していたが、まさか訪問者とはね……正直驚きだ」
「訪問者……?」
「私も直接会うのは初めてだけどね。聞いたことはある、数十年に一度別の世界から飛ばされてこの世界に生き物がやってくることがあるらしい」
「訪問者……僕以外にも同じような境遇の人が居るとは思いませんでした。それにすんなり信じられるとは驚きです」
「私も直接会うのは初めてだけどね、貴重な体験をさせて貰っているよ」
転生者とは少し違うようだけど、どうやらこの世界には似たような事例が過去に何度かあったらしい。何はともあれ、僕の存在が受け入れられたのはありがたい。
「話を戻そうか、訪問者についてだけどね。過去の事例を参照するなら、訪問者ってのは大体特異な体質だったり能力を持っていると言われている」
そう言ってエレさんほ僕の目を指差す。
「君の場合はその目かな、魔精を見る事ができるなんてのは聞いたことがない。私は今非常に君の目に興味がある」
「目ですか?そんなに珍しいことなんですか」
「そうだね、君はこの世界の人じゃないなら魔法の体系も違う可能性もあるね。少し説明しようか」
「お願いします」
まあ僕の世界に魔法なんてもの無いから、体系が違うとか以前の問題なんだけど、説明来てくれるというなら大変助かる。
魔法か、創作の存在だと思ってたものが今まさに目の前で見せられようとしている。ワクワクもするし、それと同時に夢を見てるような不思議な気持ちにもなる。
「この世界の魔法は基本的に魔精、魔力精霊によって成り立っているんだ。魔精っていうのは何処にも存在してるし、存在してないとも言われている。簡単に言えば、住んでる世界の層が違う存在なんだ」
理解できてるのか分からないけど、まあ絵を描くときのレイヤー見たいなものかと自分の中で納得させておく。
「その魔精に対して、自身の魔力を使い言葉を用いて、この世界に魔精を導き、現象を引き起こすのがこの世界の魔法の原理という訳だ」
そういうと彼女は懐から小さな杖を取り出して、指揮棒のように振りながら立ち上がる。そうすると同時に、彼女は薄い色の膜に包まれ、それが徐々に杖へと集まっていく。
「我水を求める、アーテゥス」
そう唱えると同時に、彼女の周りから色を纏った蝶々が数匹ヒラヒラと現れる。その蝶は杖の先端へと向かい、その後スッと消えると同時に杖の先には水の球が出来上がっていた。
「これがこの世界の魔法って訳、君にはどんな風に見えるのかな」
「すごい!エレさんに色がついたと思ったら、後ろから蝶が出てきてそれが消えて水球に変わりました」
「なるほど、やはり魔精を目で捉える事ができると言うのか。それに蝶々か……面白い」
僕は今非常に感動していた、色が見えた事の感動もあるが、魔法の存在をこの目で確認できたことが男心を燻った。
「ノワ君、君の意見は非常に貴重で興味深い。もっと話を聞きたいところではあるけど、まずは君が気になってるであろう、私が何者なのかも話そうか」
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