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序-とある貴族と自動車整備士-
「──なんだと?」
ここは『ひかりのまち』。『かぜのまち』とは違い貴族達が住まう華やかな町だ。道路は綺麗に整えられゴミ一つ落ちていない。また、庭からは花の香りが漂ってくる。
貴族の町、という事もあり毎日毎晩になると何処かの屋敷ではパーティが行われる事もある。
──今は丁度昼時。デデデ社長がカフェに行った時間と同時刻の頃。
「聞いた事ねぇか? メタナイト。なんでも古代機械が【ダイヤモンド鉱山】で発掘されたんだとよ」
そう言い、キャップを被った緑色のワドルディは赤いスポーツカーをメンテナンスしていた。この赤いスポーツカーは彼──メタナイトという仮面を被った貴族の愛車である。
この『ひかりのまち』は『かぜのまち』と比べ飛行機よりも自動車が主流だ。とはいえ飛行機が全く無い訳でもなく飛んでいるのも見かける。ただ、メンテナンスをするとなるといちいち『かぜのまち』にある【デデデ工場】に行かねばならないが。デデデ工場は飛行機を販売しているだけでなくメンテナンスも承っている。
さて。メタナイトがいるこの場所は【ディルド自動車専門店】といい、名前の通り蒸気自動車専門の店で貴族達がよくやってくる。自動車販売員兼凄腕の整備士の緑色ワドルディ──ディルドが有名だ。彼に任せればおススメの車を教えてくれたり、どんな車もメンテナンスしてくれる。お値段は車そのものもメンテナンス代もリーズナブルと話題だ。……とはいっても車種や車の状態によっては値段が変わるのだが。
「はぁ」
「んで、その機械を動かそうにも肝心の歯車が三つ無かったんだ。それを全て見つけた奴には百万ポイントスターの賞金を与えるらしい。街の話題はそればっかりだぜ」
少し休むぜ、とケースの上に座りスパナをくるくる回す。
「ディルド。調子はどうだ」
「あぁコイツか? ……今の所は問題ナシ、手入れもちゃんと行き届いてる。流石だぜ。感心したよ」
「一番スピードが出るからな、私も気に入ってよく乗っている。やはり車はいいものだな、思い切って買ってよかった」
何の問題とないと言われた愛車に満足気のメタナイト。毎日欠かさず磨いている事もあって傷は目立っていない。ディルドはケースから降り今度は窓を拭く。
「俺も俺でその噂に興味がない訳じゃねぇんだ」
「ほぉ。やはり金か?」
「金じゃなくて古代機械を見てみてぇモンさ。何でも願いを叶える古代機械……、中々ロマンがあると思わねぇか? アンタもそうだろ? 冒険とか謎だとか、そう言ったモン好きじゃねぇの?」
「ふむ……」
メタナイトは考える素振りをする。彼は貴族であるが他の貴族達と比べ冒険や謎解きといったものが好きな方だ。本を読んだり登山しに行ったり。
「ま、いいけど。──はい。メンテ代の三百ポイントスター頂戴するぜ」
「いつもすまないな」
「いンや気にすんな。寧ろ来てくれ、こっちも商売だからよ」
メタナイトは彼に三百ポイントスターを渡し車に乗って店を後にした。背後から「毎度サンキューな!」とディルドからの見送りの声がする。
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