序-黄色い探偵と少女達-

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序-黄色い探偵と少女達-

「初めまして!」 「ん?」  サァ、と原っぱに風が吹く。この原っぱに一つ目の歯車があると【星のコンパス】は指していたのだが目薬の無い彼等には意味のない話だった。これはカービィ達とマホロアが出会った朝と同時刻である。 黄色のワドルディは原っぱで風景を描いていた少女とその友達に声をかけた。一人はニンゲン、もう一人は妖精のようだ。 「君達、この『かぜのまち』に引っ越してきたばかりでしょ。この前出来たアパートに荷物を運んでいたの見たよ」 「そ、そうだけど……。君は誰?」 「僕はドルディ! 黄色ワドルディのドルディなんだな。この『かぜのまち』で探偵っていうのをやってるんだな!」 「ドルディさん、でしゅか。……その探偵さんがどうして私達に?」  よいしょ、とバックを下ろし原っぱに座る探偵──黄色ワドルディのドルディ。頭にはゲームなどでよく見かける探偵帽を被っていた。 「実はねぇ、【夢幻の歯車】の捜索依頼を頼まれたんだな。路地裏とかお店の中とかを探してみたけど見つからなくてね、最後はココしかないって思って来たんだ」 「「【夢幻の歯車】?」」 「あれ? 知らない? 【ダイヤモンド鉱山】で古代機械が発掘されて、それを動かすのに三つの歯車が必要って事になったんだな。三つ歯車を見つけたヒトには百万ポイントスターをくれるっていうものだから、街中噂になってるんだけど」  意外だねぇ、と目を丸くする。引っ越ししてきたばかりとはいえ軽くは耳にしているとばかり思っていたらしい。それ程街の話題は歯車と古代機械の事で溢れていた。 「歯車だけじゃなくて、古代機械も話題になってるんだな。なんでも『願いを叶えてくれる』んだって。それも"何でも"なんだな! 美味しいご馳走も沢山のお金も!」 「本当? 凄いね!」 「楽しそうですね!」 「でしょ? ロマンがあるんだな!」  手を広げ古代機械の凄さを語る。そしてその噂のおかげで探偵である自分は忙しいと言うのだ。嬉しい誤算、と言うべきか。本来はここまで客は来ず暇を持て余す事もしばしばあるそうで。 「所でドルディ君。その歯車ってどんなの?」 「うーん。調べたんだけどよく分からないんだな。歯車って言うから多分歯車の形はしてるんだと思う。僕、古代文字はからっきしなんだな」 「古代文字……ですか」 「うん。──そうだ。僕は君達の事を何て呼べばいいんだな?」 「え? あぁ、私はアドレーヌ。一応画家……なんだけどね」 「私はリボンです。よろしくお願いしますね」  彼女達はペコリと一礼する。 「よろしくねぇ。……えっと、出会ったばかりの君達にこんなお願いをするのは申し訳ないんだけど、もし歯車を見つけたら僕に教えてほしいんだな!」 「え?」 「僕一人じゃ見つけられなくて。……あ、勿論お礼はするんだな! 【ドロッチェ・カフェ】で好きな物奢るんだな!」 ワタワタと両手を振る。 ──【ドロッチェ・カフェ】はその名の通りドロッチェが店長を勤めるカフェでデデデ社長がよく通っているのだ。美味しい料理とコーヒーが名物で、よくお客さんが来ているそう。  最近は忙しくなってきたのか店員を雇ったという噂を聞いた。青い髪が似合う美人さんらしい。 「う、うん。……見つけられたら、だけど」 「本当? ありがとう! 勿論無理して探す必要はないからね、他のヒトが既に見つけた可能性だってあるから」 ドルディはそう断り、立ち上がってバックを持つ。 「さてと、そろそろ戻らないと。──聞いてくれてありがとう! ……あ、名刺渡しておくんだな。どんな些細な事でも相談・依頼OKだからね、気軽に来てくれると嬉しいんだな!」 「ありがとうドルディ君」 「えっと……、【ドルディ探偵事務所】というんでしゅね。成程……」  それじゃあね、と手を振りながら彼女達と別れる。原っぱを吹き抜ける風はそよそよと優しい。 「ちょっと、楽しそうだね」 「そうですね!」 彼女達はキャンバスと画材を片付け、原っぱを後にするのだった。
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