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「うちも……。うちも京介のことが好き。何てすぐ言い合いになるし偉そうやけど、優しくて誰よりもまっすぐ夢に向き合ってる姿はかっこいいて思う」
まさか。
京介がうちのことを好きて思てくれてたなんて。
思ってもみなかった。歳も離れているから、子供扱いされているだけだと思っていた。
だから両想いだったことが嬉しくて、涙が出てくる。
最後の最後にええ思い出できたな……。
少し離れた京介が笑って、涙を拭ってくれた。
「これからも俺の傍にいて欲しい」
私は涙顔のまま、目いっぱいに笑う。
「ホンマはずっと傍におりたい。これからもずっとずっと、京介が描く絵を見たい。けど……出来ひん」
「……どうして?」
「でも大丈夫。京介ならやれるよ。うちはずっと見守ってるから」
「志帆?」
何を言ってるんだ? と怪訝な顔をする。そんな京介ににっこり笑い掛けた。
「好き」
短い告白をして、京介にキスをした。
「――――――チリーン――――――」
唇と唇が触れた刹那、鈴の音が鳴った。
京介が驚いてハッとなった時には、そこにいたはずの姿がなかった。
辺りを見渡してもいない。風がスケッチブックのページを捲っていき、鉛筆で描かれた女の子の絵を隠してしまう。
確かにここにいた感覚も消すように。
「志帆?」
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