14人が本棚に入れています
本棚に追加
その手伝いで、食器やコップ何かを運んで廊下を往復していると、外から志帆ー! と呼ぶ声がした。庭の方に顔を向けると、短髪で日焼け肌の男の子が険しい形相をしてやって来た。
彼は近所の幼なじみの啓太だ。
「啓ちゃん、どないしたん?」
「どないしたんとちゃうわ! お前大丈夫なんか!?」
「何が?」
意味が分からずきょとんとする。
「何がて、神社向かう途中の道に、志帆のチャリ壊れた状態であったんやで?」
そう言う啓太の後ろ、おっちゃんが乗る軽トラックの荷台に、見慣れた自転車があった。でも無残に前輪はへこみ、カゴはひしゃげフレームは曲がり、乗れる状態ではないのは明らかだった。
「うちの愛車がー!」
「事故でも遭ったんかと思て、心配するやんか」
「何かごめん。でもうち無事やしピンピンしてんで」
「それならええんやけど。せやけど何であんなとこにチャリ捨ててあったん?」
自転車に乗った覚えも、もちろん事故に遭った覚えもない。
と、言うことは……。
「盗まれた!」
ふたりの意見が一致する。
「まぁこの時期、観光客いっぱい来るからな。災難やったな」
「最悪やわー」
「志帆」
話をしていると京介が間を割る。
「話してるとこ悪い。おばさん呼んでる」
「じゃ俺、そろそろ行くわ」
「うん。ありがとーなー」
啓太は京介に軽く頭を下げて行く。呼ばれていると言うことで、京介と共に母親の元に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!