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もう二度と会うことはないやろ。
そう思っていたのに、再会はすぐ、その日の夜にやってきた。
小さな離島は近所同士の繋がりが強く、最早家族のような付き合いで、よくどこかの家族も揃って一緒に夕飯を食べることも多かった。
この日は敷島さん家のおばあちゃんが来ていた。高齢でひとり暮らしと言うこともあって、家に来るのは珍しいことではなかった。
ただいつもと違ったのはひとりじゃなかったこと。一緒にやって来たのが京介だった。
「何でおんの!?」
「夕飯に呼ばれたからだ」
顔を見ることもなく答えて、もくもくとご飯を口に運んでいる。その姿は本当に無愛想。
「何や、あんたら知り合いなん?」
「ちゃう」
ぷいと顔を背け、母親の問いに即行で答える。
「この子な私の孫で京介言うんよ。しばらく島におるみたいやから、志帆ちゃん、仲良ぉしたってや」
おばあちゃんにそう言われると、さすがに嫌とは言えない。渋々了承すると、ありがとうなとお礼を言われた。
「それより志帆ちゃん。絵描けたか?」
「うん。描けたで」
違う部屋に置いてあった紙を取りに行って、それを渡す。そこには夜空に打ち上げられた花火の絵が描かれていたが……。
「何……この絵?」
隣に座る京介がチラ見して突っ込む。
「何て、花火やんか」
「花火? こんなの噴き出たウォシュレットだろ」
「はぁー!?」
こいつ、めっちゃ腹立つんやけど?
あまりの言い様に憤慨する。
「あぁ、そう言えば京介は美大生やったね。よかったら代わりに描いたってくれへんか?」
「描くって何を?」
「夏祭りのポスターの絵を描いて欲しいらしくてな。宮司さんが志帆ちゃんに頼んだんやけど」
「あぁ、なるほど」
何かを汲み取った言い方にまたカチンとくる。紙を裏返して、書く物を要求してきた。
「簡単でいいんだったら」
ペンを受け取って、京介は絵を描き始めた。
あんだけうちのをバカにしたんやから、お手並み拝見といこか?
美大生がなんぼのもんや。
と、思っていたのだが――。
京介が描き上げた絵にハッと目が奪われた。
夜空を彩る大輪の花火。それを見る女の子と男の子。仲良く手を繋いで、後ろ姿なのに楽しそうなのが一目で分かる。
「神社なら鳥居か屋台を描いて――」
「めっちゃ凄いやん!」
京介の言葉を遮って、私は感動を叫んでいた。
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