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僕たち三人は中学入学当初からずっと仲が良かった。だから、同級生の女子についても、誰それが可愛いだの、誰それは胸が大きいだのと盛んに話題にしてはいた。けれど、自分が本当に好きな女の子について語り合うことはなかった。実は三人ともそういう方面には奥手だったのだ。可愛いものだ。しかし、まさか三人が同じ女の子に想いを寄せていただなんて、これっぽっちも思わなかった。これは、なかなかに衝撃的な事実だった。でもお陰で僕もすんなりと彼女の名前を口にすることが出来た。
「何だ、マジかよ」
次郎はそう言って笑い、
「お前ら二人、嘘ついてないか? 本当はほかに好きな子がいるくせに、俺が最初に瀬戸彩月って言ったのをいいことに、二人ともそれに乗っかっただけなんじゃないのか? 正直に言わなきゃ駄目だぞ」
克哉はそんなふうに僕と次郎の告白を疑って見せた。
そこからそれぞれが、いつから、どのくらい、彼女のどんなところを好きなのかを語り始め、誰かが挙げる彼女の良いところ、好きなところにいちいち頷き合って、声量は控えめながらも、この夜一番の盛り上がりを見せた。
そんな興奮がひと段落ついたあたりで、克哉が焚き火の炎を見つめながらしみじみと言った。
「それにしても、ここまで気が合うかね、俺たち」
「まったくだな」
僕が同意すると次郎も笑って頷いた。
だが、彼女に告白なんかしなくて正解だったと、小骨のような後悔が癒えかけた時だった。次郎がとんでもないことを言い始めた。
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