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「お前何してんの?なんか変な電話でも来た?」
「あー」
同僚が不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。迷った末、俺は正直に答えることにした。
「実は、メリーさんから電話来てさあ」
「は?メリーさんって、あのメリーさん?都市伝説の?」
「うん。十年前から電話かかってきてんだけど」
「十年前!?」
同僚が目を見開く。そりゃそうだろう、普通メリーさんといったら、電話をかけてくるたびにターゲットに近づいていき、最後は標的の後ろに立って襲ってくるという怪異のはずである。
それに十年も追われてる男なんて、そうそういないはずだ。しかし、それには理由があって。
「いや、その。俺を追いかけてきてるメリーさん、すげえ方向音痴みたいで」
現在、俺は友人と登山中。夏の富士山をえっちらおっちらと登り始めたところでして。
「……なんか、勘違いしてドイツの会社のオフィスに突撃したらしいんだけど」
『私、メリーさん。今、ベルリンにあるあなたの会社の前にいるの』
さっき、かかってきた電話がこれ。
いや、なんでドイツに行ったんだ彼女。俺の会社がドイツにあったことなんかないし、ていうか現在休暇中で毎日登山してるから、リアルの会社にも出勤することがないんだが。
この間は、自宅の前にいるの!と言いながら待てどくらせど家に突撃してこなかった。――絶対、違う家にお邪魔していたものと思われる。位置情報ガバガバすぎでは。
――高速移動できるのに、さすがに十年は気の毒すぎでは。
そろそろグーグルマップを使うようにおすすめしてあげるべきか。俺は真剣に悩み始めたのだった。
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