さようならのかわりに

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真之介くんのお店に行った日。 なんとなく凪の元気がない気がしたけど。でも帰ってきた凪はいつも通りの笑顔を取り戻していたし、そのあとも元気にお店に行っているし。やっぱりただちょっと疲れちゃってただけかな?とあまり気にせずにいた。 明日美に会ったことはそりゃあビックリしたけど、逆に明日美に会ったことで、自分の中でハッキリしたことがある。 俺と明日美は終わっている。 当たり前だと言われるかもしれないけど、明日美を好きだったときのあの想いが、今の自分には少しもないこと、それに気付くことができた。 「凪。今日のご飯はオムライスにしようか」 「ほんとっ?」 「うん。帰りにスーパー寄って材料買ってくるね」 「うん!」 今日は土曜日だけど、訳あって仕事に行かなければならない。凪も真之介くんのお店に行くからまぁいいけど。 玄関まで見送りに来てくれた凪と夕飯の約束をして、会社に向かった。 俺の仕事はシステムエンジニア。 昨年度まではクライアント企業のシステム開発をやっていたけど、その中でミスを犯し異動になった。今は社内システムの保守運用などをやっている。いわゆる社内SEというやつだ。それなりに大変なことに変わりはないけど、クライアントからの無理な納期などもなく、会社に泊まりこむようなことはなくなった。 何で俺が異動に…と思っていたけど、凪との時間をたくさん取れる、仕事よりも凪との生活を優先したいと思う今、これはこれで良かったのかもしれない。 「…よし、終わった…!」 なる早で仕事を終わらせて帰路に着く。早く帰って凪にオムライスを作ってあげたい。頭の中はそれだけだった。 「ただい、ま…?」 「直!お帰り!」 パタパタと凪が廊下を駆けてくる。だけどそれよりも気になることが。玄関にあったのは俺が買った凪の黒いスニーカーと、明らかに女性物のパンプス。 まさか、まさか…?と思いながら廊下を進む。 「…え、なんで…」 「あ、お帰り…。お邪魔してます」 部屋に入ると、そこにはなぜか明日美の姿があった。
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