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さようならのかわりに
「ねぇ大吾。こいびとってなに?」
「こいびと?」
『お仕事ってどうしたらできるの?』に次ぐ、凪からのざっくりとした質問。
こいびと、恋人…。
「えっ!?もしかして、直に恋人になってとか言われた!?」
だってだって、凪がこんなことを聞いてくるなんて。
直やるじゃん!!とひとりで興奮してしまったけど、凪のきょとん顔を見ると、どうやらそういうわけではなさそう…?一度冷静になり、凪の質問に答える。
「…えっとね、恋人っていうのは、お互いに好きだなぁって、想い合っている人、かなぁ?」
言葉にしようとすると、意外ととても難しい。現に目の前の凪は、よく分からないというように首を傾げている。
「大吾は凪のこと好き?」
「えっ?そりゃもちろん好きだよ!」
「じゃあ大吾と凪もこいびと?」
それは凪も俺のことを好きだと言うことか。それはめちゃくちゃ嬉しいんだけど、たぶん、恋人のそれとは違う。でも、「男の人と女の人が想い合うことだよ」とは言えなくて。
友達と恋人の好きの違いって何だろう?キスをしたり、セックスをしたいと思うこと?やきもちを焼いたりすること?…言葉にはできない想いを抱くこと?
「こいびとは、たいせつ?」
「そうだねぇ…。恋人は大切」
「どれくらいたいせつ?」
「どれくらい?そうだなぁ…。とってもとっても大切、かな?」
「いなくなったら、さびしい?」
「そうだねぇ、さびしいねぇ」
「一緒だと、うれしい?」
「うん。一緒だと嬉しいよ?」
「…こいびとは、宝物?」
「…え…?」
突然ロマンチックなことを言う凪に戸惑ってしまうけど、凪の顔は至って真剣で。ほんとのことを言えば、俺は今まで恋人を宝物だと言えるような恋をしたことはないんだけど、でも…、
「恋人は、宝物、だね」
そうあってほしいと思うし、そういう恋がしたいと思う。凪にもしてほしいし、その相手が直だったらめちゃくちゃ嬉しいなぁ…って、そんなことも思う。
すると凪は、そっかぁ…と寂しげにぽつりと呟いたかと思えば、突然「わかった!」と大きな声を上げた。
「ん?何が?」
「直に嬉しくなってもらう!」
直に嬉しくなってもらう…?凪の言うことの意味がよく分からないけど、なんだか凪はやる気に満ちている。
直のために何かしたい。凪はまた、そう考えているようだ。
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