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宝物の行方
小さな小さなシマリスは、緑豊かなある町で、仲良しのハリネズミと毎日楽しく暮らしていた。
そんなある日、ハリネズミはとてもとても大切にしていた宝物を失くしてしまう。悲しくて悲しくて、すっかり塞ぎ込んでしまうハリネズミ。
シマリスはハリネズミに元気を取り戻してほしくて、ハリネズミの宝物を探す旅に出る。
***
これがこの絵本のあらすじ。
旅の途中、シマリスは新しい友達にも出会い、大きなクマがコックさんをしているレストランに行って、初めてオムライスを食べた。
凪が目の前に現れた日、俺は思ったんだ。
このリス、なんだか凪みたいだなって。
ぶんぶんと首を振り、頭の中に浮かんだ馬鹿げた考えを振り払う。
このシマリスが凪だったのかも、なんて。じゃああれか、凪はこの絵本の中に帰ったって言うのか。
…そんなわけあるか。もしも、もしもそうだったとして、それなら話が違うんだ。
物語の最後、宝物を見つけたシマリスは、それを大事に抱えてハリネズミのもとへ急いで帰る。ハリネズミはすっかり元気を取り戻し、そして2匹は、それからずっとずっと、仲良く一緒に暮らすんだ。
だからもしも、凪がシマリスだとしたら、いなくなったらダメなんだ。
ずっと一緒にいてくれなきゃ。
「…凪の靴…」
そうだ、玄関に凪の黒いスニーカーはなかった。凪はちゃんと靴を履いて、この部屋を出て行ったはず。
「探しに行かなきゃ」
手の中で凪の手紙がくしゃと音を立てる。
おうちにかえるって、どこに帰るつもりなんだ。
勝手にいなくなって、俺が嬉しくなるわけないだろう。
凪は何も分かってない。俺のことなんて、何も。
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