Home Sweet Home!

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Home Sweet Home!

「さっきの子、大丈夫かな…。川に飛び込んだりしないよね?」 「さすがにないでしょ。ただ黄昏てただけじゃない?」 ふと耳に、すれ違った女性たちの声が入ってくる。…今、なんて? 「あ、あの!すみません!」 通り過ぎた女性を呼び止め、思わず腕を掴む。「え…っなに…」と明らかに怯えているけど、気にしている場合ではない。 「今の話、あの、教えてほしくて」 「え?」 「あの、川に、誰か…?」 女性たちは互いに目を見合わせ、視線だけで「この人やばい人…?」と言い合っているようだ。 だけどこちらの必死さが伝わったのか、訝しみながらも先ほど見たという男の子の話をしてくれた。 「…その、河川敷に、なんか男の子がいて」 「男の子っていくつくらいの?」 「たぶん、はたち…?くらいかなぁ」 「それで、その子が?」 「いや、なんか、橋の下に座ってて…」 「は、橋の下…?」 「ひとりでぼんやりしてたから…。だから、なんか大丈夫かなって。気になって」 河川敷。橋の下。 何で、そんなところに…?やっぱり帰る家なんてないんじゃないのか? もちろんその男の子が凪だと決まったわけじゃないけど、とにかく今はそこに行くしかない。 女性たちに「ありがとうございます」と頭を下げ、はやる気持ちを抑えて凪がいるであろう河川敷に向かった。 穏やかに流れる大きな川。だけど綺麗に整備されているわけでなはなく、人気(ひとけ)はない。橋の下、橋の下…。そう心の中で唱えながら近づいていく。 「…凪…?」 橋の下に人がいる。…でも、倒れてる…? 「…凪…っ」 急いで駆け寄ると、橋の下には小さく丸まって倒れている人の姿が。そしてその人は、間違いなく凪で。 「凪!…凪!」 横になっていた凪を腕に抱き体を揺すると、「んぅ〜…」と声を漏らした凪の目が薄く開かれた。 「凪!」 「…ん…なお…?」 「凪!大丈夫!?どうした!?何があった!?」 「…え…?」 まだぼんやりとした様子の凪は、ゆっくりと体を起こすと、きょろきょろと辺りを見渡した。 「…あれ、寝てた…」 「…寝てた…?」 俺の目を見て、こくんと頷く凪。寝てた、寝てた…。 「…わっ、直、どうしたの…?」 耳元で凪の慌てた声がする。 「こんなところで寝るなよ」って、本当はそう言ってやりたかったのに。考えるよりも先に凪の背中に腕が回って、その体をぎゅうっと抱きしめていた。 「直、泣いてるの?」 「…泣いてない」 「どうして、泣いてるの?」 「…。」 どうしてって、そんなの決まってる。 凪がいなくなったから。見つからないかもしれないと思いながら、凪をずっと探していたから。そしてやっと、凪を見つけられたから。 だから俺は、泣いているんだ。 そっと体を離し、凪と視線を合わせる。くりくりとした、小動物のようなまん丸の瞳。 凪が何者かなんて、もうそんなのどうだっていい。そもそも最初から、俺はそんなことさほど気にしていなかったんだ。 「あの手紙、どういうこと?」 「…手紙…?」 「あんな手紙残して、勝手にいなくなるなよ」
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