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舞台のあと 最終回
side 颯太
今日は樹と陽斗が新しいマンションに引っ越す日。俺は朝から手伝いに来ていた。
「......颯太さん。おはよう。今日はありがとう」
そう言った陽斗から、目が離せない。
こんな陽斗は、初めて見る...…
何て言っていいのか....
気だるそうに、樹に凭れ掛かる姿。樹の腕に掴まり微笑む顔が、見たことのない色気を纏っている。
可愛いさは、いつもと同じなのに...
さっきから、引っ越し業者の人も陽斗のことを、チラチラと横目で見ながら作業をしてる。
樹は気付いてるのか?
「......樹」
「...颯太さん。どうかしました?」
業者の人に呼ばれ、陽斗がキッチンに向かったタイミングで、樹に声を掛けた。
「......樹.....あの.....何て言ったらいいのか」
「....何ですか?颯太さんらしくない」
「....いや。陽斗のことなんだが.....」
「.....陽斗が、何ですか?」
「.....あれは、まずいと思うぞ」
「.....何が、まずいんですか?」
「.....色気が....」
「......えっ?」
「....色気が凄い....溢れてる」
俺の言葉にハッとする樹。慌てて陽斗に駆け寄ると、自分の後ろに隠した。
「.....どうしたの?」
樹の後ろから不思議そうに、顔を覗き込む陽斗。
あれは.....
その瞬間、陽斗の首筋に見えた赤い花。
そういうことか......
陽斗を、本当の弟のように可愛がってきた俺でも、今日の陽斗にはドキッとさせられた。
樹は自分が着ていたパーカーを脱ぐと、陽斗に着せてフードを被せた。
「...なんで?暑いよ樹」
「....今日はこのまま着ていてください」
樹の突然の行動に、訳が分からない様子の陽斗。
恋人が、自分に抱かれて魅力的になりすぎるなんて......苦労するな樹。
「.....俺も恋人作ろうかな」
俺は二人に聞こえないように、そう呟いた。
fin
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