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side 陽斗 段々と辺りが明るくなってきて、水平線から太陽が顔を出し始めると、水面を通って、まるでスポットライトの様に僕まで届く光の線。 地元の人の為に作られた、小さな灯台が立つ、この岬が僕は大好きだ。 1人きりのこの時間、懐かしい想いを胸に踊りだす。スマホから流れる音楽に、ステップを合わせると僕だけのステージになる。 「はぁ...はぁ...う~ん。気持ちいい」 大きく伸びをして深呼吸。軽く汗をかくぐらい踊った僕は、家への道を歩き出す。 潮の香りと町の人達の朝食の匂いが、一日の始まりを告げる。 「今日は2組のお客様って、言ってたな。急ごう」 カランカランと、カウベルがなる玄関を開けて中に入る。 「......ただいま」 もう厨房から、賑やかな音とお喋りが聞こえる。 「おっ。陽斗(はると)おはよう」 「やぁ、陽斗。今日は忙しいから、速く食べないと」 兄さんの小言を聞きながら、僕は朝ごはんが並べられたテーブルにつく。 ここは、僕達三人兄弟が営む小さなペンション。海沿いの小さな田舎町にある。何も無い所だけど、綺麗な海と優しい風が、都会に疲れた人達を癒すようだ。 そんなに多くはないお客様だけど、途切れることなくいらっしゃる。大抵は、一週間とか、長い人は半月とか滞在して、心を癒して都会に帰っていく。 この場所は、もともとは両親がやっていた。僕達はそれぞれ都会に出て、好きな仕事や夢を追いかけてたんだけど、本当に突然二人が事故で亡くなってしまった。 「このペンションは失くせない」 そう最初に言い出したのは長男の碧人(あおと)兄さん。 あっという間に仕事を辞めて戻ってきた。 「俺達のふるさとが無くなったら、お前達どこに帰るんだ?」 そんな風に笑ってたけど、ずっと修行を続けてたコックの仕事を辞めるのは、相当な決心が必要だったと思う。 「碧兄だけじゃ、心配だな~」 そう言って、やっぱり勉強も仕事も辞めて戻ってきたのは、次男の湊斗(みなと)兄さん。 湊斗兄さんも働きながら、デザインの勉強をする夢を追っていた。 二人とも、このペンションを守る為なら、何でもないことのように話すけど、いろんな想いがあったと僕にも解る。 僕は、そんな二人の兄が大好きだ。 「今日は、新しいお客様が2組と颯太(そうた)さんが、戻ってくる」 「じゃあ、お部屋は3室で、夕食は何名?」 「全部で4名だな」 「皆さんいつまで滞在するかは、決めてないと言われてた」 二人の兄さんの話を聞きながら、僕は新しいお客様にわくわくしていた。
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