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 槇野から与えられる絶頂は、全くの予測不可能で不意打ちのために避けることも逃すことも出来ない。 結果、高崎は低く高く喚き喘ぎ続けるのがやっと、――精一杯だった。 「ヤっ!ヤダぁ・・・・・トモ、ヤ、もぉぉ、嫌ぁぁ・・・・・・もうぅ、無、理ィィ・・・・・・」  何度何回かも曖昧な程に『絶頂』へと至った高崎の呻き声の、語尾がかすれ途切れる。  きつくつむっていた高崎の目の隙間から、とうとう涙がジワリとにじみ出してきた。 自分でも知らない内に、わけがわからない内に高崎は涙をこぼし泣いていた。  目ざとくも気が付いた槇野が、すぐさまに謝ってくる。 「ゴメン、コウタ」 「でも、可愛い」と、行き掛けの駄賃の如くに言い足して、高崎の目尻を濡らす雫を唇で拭い取った。  くすぐったさに反射的に開いた高崎の目を見つめながら、槇野は言った。 両手で、高崎の両頬を顔全体をすっかりと抱え込む。 「俺ももう、限界。一緒に、イこう――」 「‼」  槇野の目は、高崎が初めて見たくらいに細められ、且つ目尻が下げられていた。 高崎には槇野が笑っているのが、確かに分かっていた。
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