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いつの間にか寝てしまったらしい。
目を覚ました高崎が寝返りを左へと打つと、槇野の顔が目の前にきた。
部屋の中はまだまだ暗いが、分かった。
高崎が驚いたのはほんの一瞬だけで、後は眠る前と同じで「ただ、うれしかった」
まるで夢みたいだったが、けして夢じゃない・・・・・・
その事実が、今、槇野と同じ布団の中で寝ている現実が、高崎にはひたすらうれしかった。
以前は周囲を窺う様にして恐る恐る見ていた槇野の寝顔を、もっとよく見ようと、見たいと高崎は思う。
さらに顔を近付けた。
その時、槇野が目を開けた。
以前の高崎だったのならば、慌てて顔を離し背けていただろう。
まるっきり何事もなかったかのように、取り繕うために必死になっていただろう。
しかし、今はそんなことをしなくてもいい。
高崎へと微笑みかけてくれる槇野の柔らかい笑顔が、無言の内にそう教えてくれた。
「おはよう。コウタ」
「おはよう。・・・・・・トモヤ」
槇野がベッドヘッドへと手を伸ばし、小さな目覚まし時計を掴んだ。
蛍光塗料で光る文字盤の針を見て、言う。
「本当に早いよ。まだ4時だ」
「そんなに早いんだ」
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