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顎のすぐ下にある高崎の頭の後ろの曲線を撫でながら、槇野は説明した。
「『遠雷は大雨になる』って言い伝えもあるんだ」
「へぇー、そうなんだ」
高崎は槇野の気を惹くために、殊更食いついた返事をしたわけではない。
やっぱり槇野は物知りだと、本気で感心をした。
それを披露しても全く嫌味にならないのが又、槇野のすごいところ、美点だと思う。
高崎が見上げてくる目を介して、槇野にも伝わったのだろうか。
槇野は浮かべていた微かな笑みを、くっきりハッキリと色鮮やかにした。
「――前から思ってたんだけどさ」
「な、何?」
自分に何を言われるのかと、あからさまに怯える高崎へと槇野は続ける。
「コウタって俺の話、ちゃんと聞いてくれるよな」
「え・・・・・・?」
「自分でも気を付けてたんだけど、俺はよく、周りから『理屈っぽい』って言われてたんだ」
「そんなこと――」
笑顔に苦いものを交ぜる槇野へと、高崎は「そんなことない!」と言おうとした。
高崎を先回りして、槇野が告げてくる。
「だから、何時もコウタが聞いてくれてうれしかった」
「・・・・・・」
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