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「うれしい」のは、そんな風に槇野に言ってもらえる自分の方だ!
高崎はそう思ったが、黙っていた。
――うれし過ぎて、巧く当てはまる言葉が思いつきそうにない。
何ともどうにも、もどかしかった。
高崎の板挟みなど知る由もない槇野は、さらに淡々と平らかに続ける。
「そういうところから、コウタのことを好きになったのかも知れない」
「トモヤ・・・・・・」
ぼんやりとした顔を明らかに赤くし、高崎は槇野の名をつぶやく。
槇野は「もう少し寝よう」と言っていたが、高崎の眠気は一瞬にして吹っ飛んでしまった。
これ以上は到底、黙っていることが出来なかった。
「あ、当たり前だろ!好きになった人が話していることだったら、何だってちゃんと聞くよ!その・・・・・・好き、なんだから」
「コウタ――」
心の底から驚いた時の癖である、まばたきを何度か繰り返してから槇野はゆっくりと口を開いた。
「天気悪くなりそうだし、今日は一日中部屋に引きこもってようか」
「えっ?」
「すぐに帰る?コウタ、今日は何か予定がある?」
早口で続けざまにたずねてくる槇野へと、さらに上回る速さで高崎が即答した。
「帰らない!予定なんて全然ない!」
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