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そこまで強い口調で、「暇だ」と断言しなくてもよかったのでは?と、高崎は思う。
当然、言ってしまった後にだ。
――もう遅かった。
つい、むきになってしまった自分を恥ずかしく思い、高崎は槇野の裸の胸板に顔を伏せる。
よくよく考えてみればこちらの方がよっぽど恥ずかしい行動なのだが、その『考え』は今の高崎の頭の中からすっぱりと抜け落ちていた。
槇野は特に高崎をからかう様な真似はせずに、頭の後ろの曲線を上下に撫でさする。
「じゃあ、俺とゆっくり過ごそう」
「うん・・・・・・」
高崎が小さく返事をしてしばらくすると、又遠くの方から雷の低い音が鳴ってきた。
「クワバラ、クワバラ――」
飽きずに繰り返し繰り返し唱えてくる槇野の声にうっとりと耳を傾けながら、高崎は全然眠れないはずなのに、ただじいっと目を閉じ続けていた。
終
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