7人が本棚に入れています
本棚に追加
発端
なかった。
いくら探しても、
なかった。
冷蔵庫の隅から隅まで探した。
なかった。
私が食べようと入れていた、
期間限定の、なめらかふわとろ生プリン。
ない。
ない!
ない!!!
ないぃぃぃぃぃぃい!!!!!!!!!!
誰かが、食べやがった。
わざわざ袋に入れて、袋には『サキの命。食べたら殺す』と書いていたにも関わらず。
まず最初に疑ったのは、3歳年下、次女のカノ。小学6年12歳。
何よりカノには、前科がある。
当時、私が中一で、カノは小学3だった。
あの時はブリンではなく、やっと見つけた、果汁そのまま夕張メロン味のアイスだった。誰にも食べられないよう袋の上から、『サキの私物。食べたらぶっ殺す』と書いていたにも関わらず、カノは食べた。
しかも、最後まで食べていないとシラをきっていたが、チクり屋の三女のミクの告げ口で判明。
私とカノは取っ組み合いの喧嘩をし、カノの長い髪を鷲掴みにして家中を引きずり回した。母が止めに入らなかったら、私はカノの髪の毛をハサミでバッサリやっていたかもしれない。
ちょっと自分が、怖い。
次に疑うのは、三女のミクだ。
普段は大人しい。というより、猫を被っていて、やたら甘え上手で、誰にでも媚びまくる。
しかし、小3になってから、裏の顔が垣間見えるようになってきた。夕飯のつまみ食い、おやつ荒らしもしている(我が家では姉妹3人のおやつはきちんとパントリーの中のカゴに分類されている)。
見方によってはカノよりずる賢いのがミクだ。
次が父。
悪意なく人のものを平気で食べる。たいがいは酔っ払った時にそれは起こる。ビールを飲んでいたから、酔っていることをいいことにプリンを食べている可能性は、ある。
最後が母親。
基本的に人の物を勝手に食べたりはしないが、何せ美味しいものには目がなく、甘いもの大好き。しかもいつもキッチンにいるから、チャンスは一番ある。
いずれにしても、必死で探しまわり、何より楽しみにしていた、なめらかふわとろ生プリンを食べたやつは、絶対に許せない!
そして犯人は、家族の中にいる。
私は冷蔵庫のドアを閉め、低くつぶやく。
「食べ物の恨みは、許さない」
最初のコメントを投稿しよう!