槍と槍の切っ先が当たったら結婚だなんてそんな奇跡が起こらない限り、わたくしのような槍を振るうしか能のない女は結婚できないのでしょうね。って暗に言われてる感じなのでしょうか?

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父上のワガママが始まってしまいました。もはやこの人を止める術はございません。あ、もうこれ『祭り』決定だわ。なら焼き鳥でも焼こかーー(注1) ※注1 リリアン王女は祭りではいつも焼き鳥を販売し、その収益で大好きなカツ丼(高価)を食べている。 私は心の中でがっくりと崩れ落ちましたわ。 え、待って⁉︎ もしかして…… 槍と槍の切っ先が当たったら結婚だなんてそんな奇跡が起こらない限り、わたくしのような槍を振るうしか能のない女は結婚できないのでしょうね。って暗に言われてる感じなのでしょうか? って。タイトルの通り? そゆこと? 「……わ、わかりました」 もろもろ納得はできませんが、父上の仰ることには逆らえません。大会の開催は仕方がないこととしました。 私は持っていた槍を握り直すと、意を決して城の中庭へと踵を返しました。 って感じで、凛として退出しましたけど、これはまさに余裕のよっちゃんよっちゃんイカ。 だって、槍の切っ先同士が当たるわけなかろ〜もん。ってね! ✳︎ さて。 懸命な皆々さまのこと、なぜ私が『婚約者候補選手権大会』に反対反対大反対するのか、お分かりになっていらっしゃると存じます。 私にはお慕い申し上げているお方が。そしてそれはもちろん、私の師匠、グリニアート先生。 もとより槍の腕前は上級の上、雲の上の存在で私など叶うはずもありません(先ほど師匠越えなどと大口を叩き、先生の逆鱗に触れてしまったかもです。しゅん)。 何度挑んでも、先生の槍の切っ先を喉元に突きつけられ、敗北しておる次第。 しかしそのきりりとしたお姿に、お稽古のときは毎回、どきどき&きゅんきゅんと胸を鳴らしているのでございます。 そう。私。先生に恋をしているのでございます。 先生はその名を知らぬ者などこの世にはいないというほどの、槍の名手。槍をまるで生き物のように扱われ、舞を舞っているかのごとく、敵に見立てた的を次々と落としていく。その立ち姿はかっこよすぎて、それはもうヨダレ爆涎ものです。 グリニアート先生が、全世界全国民の中での、唯一無二の『推し』。私のすべてと言っても過言ではございません。 (はあーあ。『全国リリアン婚約者候補選手権大会』かあ。焼き鳥は焼くけど、その他は気が重いですわ) ですが、いつまでもうじうじうじうじしているわけには参りません。父上の話を聞いたこの日の午後も、稽古は怠りませんわ。
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