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「リリアン! もっと腰を下ろすのです! 腕だけの力で相手の急所を突くことはできません。心技体すべてに精神を行き届かせて発動し、そのひと突きにすべてを込めるのです」
「はいっ!! 先生っ!!」
先生が懐からお蜜柑を出し、そらっと投げる。そして、宙を飛んだお蜜柑に向かって、私は槍をやあー!! っと突き上げる。鋭く。そしてしなやかに。
私が放った槍の切っ先には、お蜜柑がぶすり。これは決してドリフのパクリとかじゃなく、私の親愛なるグリニアート先生が考案された技の鍛錬方法。
「よし! 次っ!!」
さっとお蜜柑を抜いて、次を待ちます。
「行きますよ、リリアンっ、そらっっ」
「はい! やあーーーー!!」
おキウイがぶすり。その果汁がぶしゃっと辺りに散ります。そして、おグレープフルーツがぶすり。ぶしゃあっ。ぶすりぶすりぶすり。ぶしゃあぶしゃあぶしゃあっっっっ。
「リリアン。自分の腕の力を過信し過ぎてはいけません。腕を振り子のように振り、その反動で素早く伸ばすのです。そらっ!!」
飛んできた、おスイカに向かって槍を素早く突き立てます。
え? スイカ? どっから出したん? イリュージョンか! しかもだんだんと的が大きくなっとるやんけ!
スイカの汁が飛び散って、顔に掛かります。しかも、スイカおっも。
「グリニアート先生っ!」
私は、ベッタベタの顔で、精一杯叫びました。
「先生はこの大会に賛成と仰っていましたが、先生は私の結婚にも賛成でございますの?」
そしてその言葉に、グリニアート先生は懐に入れていた手を一瞬、止めました。ちらりとレモンが見えています。おいー目潰しする気かー。
「リリアン。貴女は腐っても王女。腐っても父王さまの跡継ぎでございます。王家を存続させるためにも貴女は貴女より優れた者と結婚し、そして跡継ぎを残さねばなりません。私は腐っても賛成です」
あれ私腐ってる?
意気消沈にございます。
「……承知しました。それでは、腐ったお蜜柑は、すごすごと城へと戻りましょう」
がっくりです。もうもうがっくりがっくりでございます。(二回繰り返すことによってがっくり感ましまし)
先生が、私の結婚に賛成だと仰った。それはもう、やんわりふんわりやわもちアイス的解釈をしたとしても、かんっぜんにフラれたも同然なのでございます。
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