槍と槍の切っ先が当たったら結婚だなんてそんな奇跡が起こらない限り、わたくしのような槍を振るうしか能のない女は結婚できないのでしょうね。って暗に言われてる感じなのでしょうか?

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私は途端に元気がなくなり、数十種類の果汁をいっぱい受けたベトベットンな顔で、とぼとぼと帰宅したのでございます。 ✳︎ 大会当日。この日は快晴。青い空白い雲のもと、白煙を立ちのぼらせては焼く焼き鳥もまた、最高にうまい! ビアープリーズ! お客さんも遠路はるばるお越しくださり、屋台の収益もうなぎ登り。高級カツ丼を100杯ほど食せる金額を稼ぎました。え? 寄付? はあ。まあカツ丼一杯なら。 パパパパーン パパパパーン パーンパーンパアアァァァーッン 大会の始まりを告げるファンファーレが、競馬場よろしく、高らかに鳴り響きました。 私は焼き鳥串から、愛用の槍に持ち替え、そして闘技場の真ん中に立ちます。 「それでは第1回『全国リリアン婚約者候補選手権大会』を開催いたします!」 第1回ってなに⁉︎ 「まあ確かに早々、槍と槍の切っ先が当たるはずはない、そう高を括っていらっしゃるのですね。父上は」 お一人目のお相手さまが、登場されました。 「私は、エスディージーズ国、第4王子オオイナルヤボウと申します。リリアン王女、かねてからお慕い申しておりました! このチャンスを逃すまいと、手を挙げた次第でございます! 私をどうか貴女の結婚相手にお選びください!」 私は槍を握り直しました。好意を向けられるのは、そう悪くはないものでございます。けれど、ここで切っ先が当たってしまったら、このお方と結婚しなければなりません。 「手合い、始めええぇい!」 審判の合図により、私と私のお婿さん候補の方の手合いが始まりました。そして、私は私の槍の切っ先を守るべく、槍の持ち手の方で戦っていったのでございます。 …… …… って? え? 持ち手で戦って、ヤル気はあんのかって? もちろんでございます。ヤル気は十分でございますが、結婚する気は毛頭ございません。 相対する王子様、勇者様、海賊王様、影武者様、そして進撃の巨神兵様。申し訳ございません。私には心に決めたお方がいらっしゃるのでございます。 ただ。この秘めた想いは、とうてい成就することなく、陽の目を見ない悲しい想い。それでも私はグリニアート先生といつまでも槍を交えたい。想いは届かなくとも、悲しみ苦しみはありますが、幸せなのでございます。 「最後の候補者! 前へっ!」
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