槍と槍の切っ先が当たったら結婚だなんてそんな奇跡が起こらない限り、わたくしのような槍を振るうしか能のない女は結婚できないのでしょうね。って暗に言われてる感じなのでしょうか?

6/8
前へ
/8ページ
次へ
その言葉に、私はあと一人、と、つい呟いてしまいました。けれど、これで終わる。気合いを入れ、槍を握り直しました。もちろん、槍を切っ先と持ち手を反対にして。 するとどうでしょう。 最後の一人が現れました。それはなんとまさかのグリニアート先生! グリニアート先生は、ご自分の愛用の槍、『電光石火』をお持ちになり、そして戦闘態勢に構えているではございませんか。 そして。 「リリアン! 私と最後に一手しおうではございませんか!」 「ななななぜ先生がっっ」 もちろん。先生に敵うはずがありません。けれど、先生のその真剣な眼差し。鋭い眼光。隙のない体勢。 どれを取っても、その場から逃げ出すことはできません。 「けれどこれは……」 ちょおーっと考えてみて。これってチャンスじゃね? 「先生は、私の花婿候補ということでよろしいんでしょうか?」 「そう取っていただいても構わない」 マジで? うそぉ! やたーー!! 私は槍をあえて持ち替えました。槍の切っ先を先生へと向けます。あえて。 (ち、父上は、賛成ってこと?) なぜか何も言わない父上へと、チラリと視線をやります。 父上は王座に座りながら、舟を漕いでいました。ごうごうとZzzが聞こえてきます。 寝てるんかい! 今が一番のクライマックスなのにぃぃ! 見てえぇぇ! 気を取り直して、私は戦闘態勢に入り、槍を構えました。とはいえ、敵は強し。私は真剣な眼差しで、この対戦を迎えることに代わりはありません。 「手合い、始めええぇい!」 その合図とともに、先生はすぐさま槍をひと突き、向けてきました。そして、そいやそいやと数段の突きを繰り返してきます。私はその突きを、カツンカツンひらりひらりとかわしていきます。そして、私も反撃に出ます。槍でひと突き、ついに先生の腹部へと突き立てました。 先生はそれを槍の切っ先でくるんと返し、そして一回転。バックへとひらりと飛んで、そして。 「リリアン、そらっ!!」 懐から出したものを空に向けて放り投げました。私はパブロフの犬のようにそれ(・・)に反応し、そして落ちてくる物体に向かって、はああああああああっっと槍を突き立てました。 全集中でございます。神経を槍、一本に込めて! ガツン! 鈍い金属音が闘技場に響きました。なにかが切っ先に当たったのでございます。その振動が伝わってきて、槍を持つ腕がびりびりと痺れました。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加