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その言葉に、私はあと一人、と、つい呟いてしまいました。けれど、これで終わる。気合いを入れ、槍を握り直しました。もちろん、槍を切っ先と持ち手を反対にして。
するとどうでしょう。
最後の一人が現れました。それはなんとまさかのグリニアート先生!
グリニアート先生は、ご自分の愛用の槍、『電光石火』をお持ちになり、そして戦闘態勢に構えているではございませんか。
そして。
「リリアン! 私と最後に一手しおうではございませんか!」
「ななななぜ先生がっっ」
もちろん。先生に敵うはずがありません。けれど、先生のその真剣な眼差し。鋭い眼光。隙のない体勢。
どれを取っても、その場から逃げ出すことはできません。
「けれどこれは……」
ちょおーっと考えてみて。これってチャンスじゃね?
「先生は、私の花婿候補ということでよろしいんでしょうか?」
「そう取っていただいても構わない」
マジで? うそぉ! やたーー!!
私は槍をあえて持ち替えました。槍の切っ先を先生へと向けます。あえて。
(ち、父上は、賛成ってこと?)
なぜか何も言わない父上へと、チラリと視線をやります。
父上は王座に座りながら、舟を漕いでいました。ごうごうとZzzが聞こえてきます。
寝てるんかい! 今が一番のクライマックスなのにぃぃ! 見てえぇぇ!
気を取り直して、私は戦闘態勢に入り、槍を構えました。とはいえ、敵は強し。私は真剣な眼差しで、この対戦を迎えることに代わりはありません。
「手合い、始めええぇい!」
その合図とともに、先生はすぐさま槍をひと突き、向けてきました。そして、そいやそいやと数段の突きを繰り返してきます。私はその突きを、カツンカツンひらりひらりとかわしていきます。そして、私も反撃に出ます。槍でひと突き、ついに先生の腹部へと突き立てました。
先生はそれを槍の切っ先でくるんと返し、そして一回転。バックへとひらりと飛んで、そして。
「リリアン、そらっ!!」
懐から出したものを空に向けて放り投げました。私はパブロフの犬のようにそれに反応し、そして落ちてくる物体に向かって、はああああああああっっと槍を突き立てました。
全集中でございます。神経を槍、一本に込めて!
ガツン!
鈍い金属音が闘技場に響きました。なにかが切っ先に当たったのでございます。その振動が伝わってきて、槍を持つ腕がびりびりと痺れました。
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