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 やむを得ずエリアAに舞い戻ってきた蘭と條太郎。 不幸中の幸いか、エリアCとの境界線に『H』の空き缶を発見した。 有無を言わさず撃とうとした條太郎の手を、蘭が制止する。 「待って。私、気付いちゃったの」 真剣そのものである蘭の表情を正視し、條太郎は銃を引っ込める。 「気付いたって、何に?」 視線を下げる蘭に、固唾を呑む條太郎。 「空き缶に書かれてたアルファベットを思い出してみて。  エリアAで見つけたのは『S』と『H』、エリアBで『A』と『T』、  そしてエリアCで『E』。  これを順に並べると『SHATE』。  空き缶は全部で7本あるから、残り2本『K』と『I』で『SHATEKI』。  射的のローマ字読みになる」 「ってことは……?」 「あくまで推測だけど、7種類のアルファベットは  エリアA・B・Cの順に配分されている。  この法則に基づくなら、『K』と『I』はエリアCにしか存在し得ない!」 驚くべき推理に唖然とした條太郎は、 エリアCの現状を思い出してさらに青ざめる。 「でも、エリアCはもう安全地帯じゃない……」 「そう。だから、私が高速移動能力を使って探しに行く」 「ダメだって! あのダメージ速度を見たろ?  いくらアビリティが強力だからって……耐えられないよ!」 首を横に振り、懸命に引き留める條太郎。 何が何でも蘭を守り抜く。道慈から託された一言を裏切るわけにはいかなかった。 けれど、当の本人はもう早アビリティボタンの上に手を置き、 出発の準備を整えていた。 「その『H』の空き缶は、私の任務が終わってから撃って。  じゃないと、敵が先に寄ってきちゃうでしょ?」 潤む條太郎の瞳には、蘭の笑顔が初めて儚く映った。
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