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5
やむを得ずエリアAに舞い戻ってきた蘭と條太郎。
不幸中の幸いか、エリアCとの境界線に『H』の空き缶を発見した。
有無を言わさず撃とうとした條太郎の手を、蘭が制止する。
「待って。私、気付いちゃったの」
真剣そのものである蘭の表情を正視し、條太郎は銃を引っ込める。
「気付いたって、何に?」
視線を下げる蘭に、固唾を呑む條太郎。
「空き缶に書かれてたアルファベットを思い出してみて。
エリアAで見つけたのは『S』と『H』、エリアBで『A』と『T』、
そしてエリアCで『E』。
これを順に並べると『SHATE』。
空き缶は全部で7本あるから、残り2本『K』と『I』で『SHATEKI』。
射的のローマ字読みになる」
「ってことは……?」
「あくまで推測だけど、7種類のアルファベットは
エリアA・B・Cの順に配分されている。
この法則に基づくなら、『K』と『I』はエリアCにしか存在し得ない!」
驚くべき推理に唖然とした條太郎は、
エリアCの現状を思い出してさらに青ざめる。
「でも、エリアCはもう安全地帯じゃない……」
「そう。だから、私が高速移動能力を使って探しに行く」
「ダメだって! あのダメージ速度を見たろ?
いくらアビリティが強力だからって……耐えられないよ!」
首を横に振り、懸命に引き留める條太郎。
何が何でも蘭を守り抜く。道慈から託された一言を裏切るわけにはいかなかった。
けれど、当の本人はもう早アビリティボタンの上に手を置き、
出発の準備を整えていた。
「その『H』の空き缶は、私の任務が終わってから撃って。
じゃないと、敵が先に寄ってきちゃうでしょ?」
潤む條太郎の瞳には、蘭の笑顔が初めて儚く映った。
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