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 蘭は『A』の空き缶を、道慈と條太郎は『T』の空き缶を それぞれ発見し、順調に撃ち落とした。 「よし、蘭が来るまでここで待機しておこう」 程なくして、男二人のもとへ足音が徐に接近する。 「あ、蘭! こっちこっち……」 手を振りかけて、條太郎は絶句した。足音の主はガスマスク男だった。 空き缶の落下音を頼りに、彼は挑戦者の居場所をどこまでも嗅ぎつけるのだ。  條太郎は慌てて身を潜めたが、時既に遅し。 獲物に飢えたガスマスク男は一直線に向かってきていた。 「マズい、マズい!」 縺れる足で一心不乱に藻掻く二人。 検知能力を使って、マップ上に敵の位置を共有しようとした道慈であったが、 なぜかアビリティボタンが反応しない。 何度も押してようやく自動音声が流れた。 「現在、アビリティはクールダウン中です。  ご使用はしばらくお控えください」 特殊能力の使用頻度には一定の間隔を設ける必要がある。 つまり、序盤に立て続けに検知したせいで、 あろうことか一刻を争う局面で発動できなくなってしまったのだった。 「くそっ! このままじゃ、蘭が敵と鉢合わせしちまう!」 道慈の悪い予感は的中した。 ガスマスク男の視界右端に、上機嫌で駆ける蘭の姿が映る。 直ちにレーザー銃の照準が変更された。 蘭は俄かにいつかと同じ殺気を察知して怯える。 「い、いやあぁぁぁぁぁ!」 道慈と條太郎は急いで悲鳴の方向へ舵を取った。 息を切らしながらも、どうにかガスマスク男の後ろ姿を捉える。 「……蘭を任せたぞ」 決意を呟いた道慈が独り、臆することなく発砲に至った。
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