1/1
前へ
/14ページ
次へ

 エリアC到着後、蘭と條太郎は残りの空き缶を探した。 嫌でも今しがたの悲劇が脳裏をよぎるため、 行動を別にする勇気が湧くはずがなかった。 だがしかし、空き缶はまるで見つからない。 30分かけてやっと、4本目となる『E』の空き缶を南部で狙撃した。 「このペースじゃ、体力が持たないよ」 彼らは測り知れない苦労を背負い、検知能力の重要性を再認識するのだった。 道慈がいれば。今更悔やんでも仕方ないことではあったが、 場の空気は知らず知らずのうちに、悲壮感に染まっていってしまった。  出し抜けにモニターへ緊急アナウンスが入る。 「只今より、安全地帯の縮小を開始します。  まずはエリアCが、次いで60秒後にエリアBが立入禁止となります。  該当エリアにいるプレイヤーは直ちに避難してください」 アナウンスを聞き終えても、條太郎は意外に落ちついていた。 「今の空き缶の音で敵が接近してくる。どうせ逃げるんだから大して関係ないさ」 「エリアCに空き缶が1本しかないなんてことあるかな?」 蘭は首を傾げる。 「まあな……」 「もうちょっとだけ探してみない?」 このとき、二人は足元を包み込む違和感を見逃さなかった。 いや、見逃しようがなかった。 四肢は紫色の煙で覆われ、若干の痺れを訴える。 体力ゲージも如実に減少を始めていた。 疑いの余地なく、ここは立派な安全地帯外であった。 僅かながら自信を取り戻していた條太郎の血の気がさーっと引いていく。 「そんなこと言ってらんねぇ、逃げよう!」 満身創痍の二人は、出発地であるエリアAへ命からがら帰還する。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加