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4
エリアC到着後、蘭と條太郎は残りの空き缶を探した。
嫌でも今しがたの悲劇が脳裏をよぎるため、
行動を別にする勇気が湧くはずがなかった。
だがしかし、空き缶はまるで見つからない。
30分かけてやっと、4本目となる『E』の空き缶を南部で狙撃した。
「このペースじゃ、体力が持たないよ」
彼らは測り知れない苦労を背負い、検知能力の重要性を再認識するのだった。
道慈がいれば。今更悔やんでも仕方ないことではあったが、
場の空気は知らず知らずのうちに、悲壮感に染まっていってしまった。
出し抜けにモニターへ緊急アナウンスが入る。
「只今より、安全地帯の縮小を開始します。
まずはエリアCが、次いで60秒後にエリアBが立入禁止となります。
該当エリアにいるプレイヤーは直ちに避難してください」
アナウンスを聞き終えても、條太郎は意外に落ちついていた。
「今の空き缶の音で敵が接近してくる。どうせ逃げるんだから大して関係ないさ」
「エリアCに空き缶が1本しかないなんてことあるかな?」
蘭は首を傾げる。
「まあな……」
「もうちょっとだけ探してみない?」
このとき、二人は足元を包み込む違和感を見逃さなかった。
いや、見逃しようがなかった。
四肢は紫色の煙で覆われ、若干の痺れを訴える。
体力ゲージも如実に減少を始めていた。
疑いの余地なく、ここは立派な安全地帯外であった。
僅かながら自信を取り戻していた條太郎の血の気がさーっと引いていく。
「そんなこと言ってらんねぇ、逃げよう!」
満身創痍の二人は、出発地であるエリアAへ命からがら帰還する。
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