プロローグ

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プロローグ

そろそろもみじが色づき始めるかという頃。 姉が死んだ。 数年前、両親が交通事故で死んで、両親の少しの保険金も両親の借金返済で終わってしまった経済状況で、自分のことなんてそっちのけで、働いて働いて僕を大学まで行かせてくれた姉が死んだ。 突然、警察から連絡があって、病院に到着した時には既に姉は死んでいた。 買い物帰り、歩道橋で足を踏み外したらしい。 荷物を持っていて手が塞がっていてさらに大きなお腹で前が見えず、足を踏み外したんじゃないかって。 中学の頃から愛をはぐくんできた婚約者とやっと幸せになるところだった。 しかし、その婚約者も不慮の事故で亡くすという不幸に見舞われていた。 姉は絶望し、自死も厭わない危うさを含んでいた時期もあった。 そこから立ち直ろうとした矢先だったんだ。 「めそめそもしてられないね、その間もこの子はすくすく育ってるんだから。お母さんが悲しい顔してたらダメだよね。」 そう言って涙をぬぐい、疲れた笑顔を見せた姉の顔を思い出す。 そこからまた姉は前を向き始めた。 これから産まれてくる赤ちゃんとの生活に前を向き始めてたんだ。 これからだったんだ。 不幸続きの姉の幸せはこれからだったんだ。 婚約者の代わりにはなれないけれど、次は僕が姉と産まれてくる赤ちゃんを守るんだと決めたのに。 これで少しは恩返しできると思ったのに。 どうしてこんなことになるんだよ…
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