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「……なんだ、ここは…。埃っぽい。どこかの物置か?」
物置じゃないわ。今日はおばあさんの遺品整理でちょっと埃っぽいけれど、普段はちゃんとお掃除しているもの!
って、そうじゃなくって。
「あなた、誰?」
アイヴィーはまだ先ほどの強い光のせいで目を開けることができなかったが、思わず問いかけた。
先程の声の主ー低く艶やかな声の主、男の気配が少しずつアイヴィーに近寄ってくる。
ようやく目が見えるようになりそうだ。
おそるおそる瞼をあげると、アイヴィーの目の前に男が立っていた。それも恐ろしく美しい裸の男が。
「俺の名はカイ。いにしえの大いなる獣、とみなは呼ぶ」
は、裸………!!!
いえ、それよりも、それもそうなのだけれど、け、獣…!?!?!
男の頭には狼のような白銀の毛並みの耳があり、引き締まった長い両脚の間から、耳と同じく白銀のふさふさの尻尾が垂れ下がっていた。
それに、男であることを示す乙女が見るべきでない立派なモノもアイヴィーの目に映った。
「…イヤ…」
もうあまりのショックで悲鳴すら出てこない。
「お前だな。俺の封印を解いたのは」
そう言って男ーカイはアイヴィーへ腕を伸ばし、腰を引き寄せて彼女の首筋へ顔をうずめた。
「なっ……!!!」
もうダメ。キャパオーバー。
アイヴィーは男慣れしていない。
そもそも町の人に不気味がられており、恋人はおろか友人すらいないのだから当然である。
心の限界を迎えたアイヴィーは、カイの腕の中で意識を手放したのであった。
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