愛染ヴァイオレットフィズ

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翳して 透かして 見惚れたような顔を 馥郁(いくふく)ヴァイオレット 騙して 融かして 無かったような事を 惜別(せきべつ)グリーンフラッシュ 幾つもの夕空を、水鏡(みずかがみ)を そのシャッターで映し()って 呼吸を繰り返してきた それは安直なモノではなかったけれど (ようや)く拠り所を見つけたかのように 甘い甘い「それ以上」を その1本に込めて 大切に大切に指を添わせたのだ 夕暮れの匂いがだんだん濃くなる いつからか守られていた 想い巡らせれば 遠くの海鳴りが菫色に染まる 菫色に染まる 囁き 微睡み 目映(まばゆ)く光ってみせた 福韻サーチライト 幾つもの鉄錆を、割れ硝子を そのカッターで刺し殺して 呼吸をつないでは()いた そんな棘を敷いた道を歩いた末に 漸く止り木を見つけたかのように 淡い淡い夕暮れの() その一瞬に惹かれ ゆっくりとゆっくりと指を繋いだのだ 朝焼けの温度がひそやかに揺らぐ いつからか救われていた 夢を見るかのように いつかの海風を菫色に染める 菫色に染める 七夜月末(ななよづきすえ) 温い空気の中 丁寧に伸ばした爪の先と 澄んだ空に愛染(アイゾメ)ヴァイオレット 甘い甘い「それ以上」を その1本に込めて 大切に大切に指を添わせたのだ 夕暮れの空気がだんだん濃くなる いつからか守られていた 想い巡らせれば 遠くの海鳴りが菫色に染まる 菫色に染まる
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