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ぼくの一生
僕が生まれたのは、暑い夏の夜だった。あたりは暗く、僕の周りだけが光っていた。
なんとなくの感覚で、生みの親はわかった。生みの親は、僕より何倍も大きく、よく顔は見えなかったが、優しい人だということは雰囲気でわかった。
その人は、ただ僕を優しく見守った。
僕は、その優しさに包まれながら、すくすくと育った。僕の周りには、いつも、沢山の笑い声が溢れていた。
そして、ある時ーーー僕は悟った。もう死ぬのだと。
感覚が、全細胞が、震え上がって、僕に教える。僕の最後はもう間近まで迫ってきているのだと。
僕は落ちたーーー僕の勘は間違ってはいなかった。
確かに、僕は死んだのであった。
短くも濃厚で、輝かしい人生であった。
『あ、線香花火落ちちゃったよ』
最後に聞こえたのは、生みの親の口から洩れたこの言葉であった。
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