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朝目が覚める。いつもより爽やかな朝だった。
「おねーちゃん、おはよう!」
「あっくん、おはよう」
あっくんの声はいつもより大きかった。息が上がって肩が上下している。いつもより興奮状態だった。
「おねーちゃん、今夜お星様にお祈りしてね!」
窓の外からは蝉の鳴き声がする。いつも隣の部屋から聞こえる地響きのようないびきは聞こえない。
「今晩のお祈りはきっと届くよ!」
動揺はしない。だって気持ちはわかるから。わたしもずっと同じことを考えていた。
「おねーちゃん、よかったね!」
よかったね、とあっくんは泣いた。
あっくんは手の甲で目を押さえる。その表情は晴れやかで、私は最愛の弟の顔についたものを自分の服で拭いてあげた。
涙と、鼻水と……誰かの血を。
そっか、爽やかな朝に感じたのは生ゴミの匂いが血にかき消されていたからだ。
「お星様、さっき新しく作ったから。おとーさんを殺して」
「あっくん、ありがとう。お姉ちゃんうれしいよ」
私の願いはあいつが死ぬこと。
お星様の代わりに、誰もこっちを見ないお星様の代わりに、あっくんが私の願いを叶えてくれた。
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