星に願いを

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私に難しいことはわからない。 耳元で小蝿が羽ばたく音がした。 ひび割れた窓から眺める星は鈍く輝き、やがて雲に隠れてしまった。私は合わせていた両手をそっと離し、かび臭い布団に寝転がる。 明日何をするだとか、これから将来どうなるだとか、私には全くわからない。 もう中学生だというのにろくに学校に行ってない私には、生きていく上で分からないことが多すぎる。この部屋にごまんといる小蝿だってどうしたらいなくなるかもわからない。たぶんあの部屋の隅に置いてあるゴミを片付ければいいんだろうけど、そのゴミをどうするのかも知らないし、それを調べる方法だって検討もつかない。 私の横ですやすや眠る弟に聞かれたことがある。「ぼくたちどうなっちゃうのかな?」と。お母さんがいた頃だったら絶対口にしなかったような変な色のお粥を前に、弟は目に涙を浮かべていた。 私は肩を落としながら「わからない」と呟くほか無かった。
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