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「なっ?君がうんって頷けばすむことなんだよ。わかるだろ」
急な男の優しい口調が、さらに気分を逆撫でてきた。
そんなやり取りを10分くらい続けていただろうか。
女性は困惑したまま尋ねた。
「そのお返事って今じゃないとダメですか?」
男の表情が少し和らいだ。
「もちろんすぐじゃないくていい。なんせグランプリがかかってるんだからな」
グランプリという言葉をひけらかしていくところがずるい。
「一週間くらいあれば返事貰えるかい?」
「一週間・・・」
女性は虚空を見つめた。
そのすぐ後に決心したようだ。
「はい、一週間後お返事致します」
「わかった。じゃあ、来週のこの時間またこの場所で返事を聞かせてくれ」
女性は頷いた。
「マスター」
呼ばれた則之は「はい」と返事を返す。
「来週のこの時間、この場所を予約できるかい?」
則之はノートを取り出し確認する。
「はい大丈夫です」
「じゃあ悪いが予約しといてくれ」
則之はノートに書き込んだ。
「今日のところは帰るか」
男は立ち上がりカウンターに一万円札を置いた。
「釣りは来週でいい」
男は扉を開けると、女性はその後を追うように出ていった。
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